
4月15日、16日の2夜連続で松嶋菜々子さん主演でドラマ化されると知り、手にとってみました。
久しぶりの山崎豊子先生、初期の頃の作品だそうですが、やっぱり読み始めるとやめられません。
その筆致に引き込まれ時間を忘れて読みふけりました。
美しくて華麗なファッション業界、その裏側にある虚飾とドロドロとした人間関係が描かれています。
式子さんという大阪・船場のお嬢様育ちの主人公を中心に、野心家でやり手の銀四郎、一癖も二癖もある
三人の女弟子、銀四郎の恩師である白石教授といった人物が複雑に絡む物語です。
時代が昭和30年代という設定なので話の展開や人物の描写にはちょっと現代とズレたものを感じましたが
虚栄心、嫉妬心、名声や金銭への執着といったものは人間の中に普遍的にあるものかと思うので
この辺は現代の社会に置き換えながら読みました。
自分の野心のために式子さんだけでなく、弟子の3人の女性にも手を出す銀四郎、最後には人の死までもを
金銭的価値に置き換えようとするあざとさにはげっそり・・・。(-"-)
式子さんが惹かれ、救いを求めようとする仏文学者の白石教授は
俗物の権化の銀四郎とは対極にあるようなストイックな人格者ですが、
人間関係の煩雑さを避けよう、そこから逃げようとする消極的な姿勢にはこれまたがっかり。
そして決して善が報われるのではなくて悪はそのままはびこるという、
山崎先生の作品では「二つの祖国」と並んで、本当に救いのないラストシーンです。(T.T)
でも世間的には「恥」とされながらもおそらく大半の人がなかなか断ち切れないだろう
「人間の業」みたいなものが描かれていて、そこが面白く、一気に読みとおしてしまいました。
徹底的な取材力もさすがです。
パリやポルトガルのシーンは日本にいながらの調査だけで書いたそうです。
来月のドラマを観るための下準備としてこの本を読みましたが、
文章だけでは想像しきれない美しい1960年代のお洋服がどんなふうに
映像で再現されているのか楽しみです。
同作品は過去にも映像化されていてその時の銀四郎役は
山崎先生お気に入りの俳優だった田宮二郎さんが演じたそうです。
なんだかぴったりな感じ。
ドラマ版のURLのリンクをこちらに引用しておきますのであらすじに興味のある方はご覧になってみて下さい。

戦争についておそらく世の中の大多数とは違う視点から語った本です。
私自身は物事を可能な限り、いろんな視点から見ることが大切かと考えています。
そういう意味で新たな視点を与えてくれる刺激的な一冊でした。
歴史に「もし」はないと、そこで思考を止めてしまうよりも
「もし」を考えることは実は大切なことではと思いました。
人々は実際に起こったことが唯一の選択だったと思いがちだけれど
世の中がもっとよくなるべき、良くなれるかということ、
それをあえて考えることが未来への指針になるのではないかと。
ストーン監督は「みんな想像力がない」といっています。
我々は常に心を開いてもっと想像力を働かせるべきだと。
この本はストーン監督が広島、長崎を訪問した時の記録を含め
200頁足らずの薄い本ですが非常に濃い内容のものでした。
オリバー・ストーン監督の映画は若い頃によく観ました。
社会問題に対して真正面から疑問を突きつけるような作品が多くあり、
その勇気に尊敬の念を抱いていましたし、
観た後でいろいろ考えることが多くありました。
もっとストーン監督の考え方を知りたいと思い、
ピーター・カズニック氏との共著、「語られない米国史」を先日、アメリカから取り寄せました。
日本語訳版では3冊になっている程の量なので届いてみたら
とても分厚くてまだ手を付けていませんが
この一冊を読み切るのが今春の課題になりそうです。(^-^;

今度、「道徳」が小学校の授業で教科化されるというニュースを知りました。
その報道の中でチラッとみた程度ですが、
教科書で「パン屋さん」は日本の伝統を軽視するものだから「和菓子屋」とするべき、とか
聞いていて、焦点になっていることがなんとなくずれている感じがしました。
本当に大事なことってそれなの??という疑問です。
凶悪犯罪がとても増えていて、世の中の多くの人から良心が失われているような時代です。
哲学者の梅原氏はこの根底にあるのは日本人が宗教を失ったからと述べておられます。
日本に仏教が入ってきて千数百年。仏教は日本人の心を培ってきた教えであり、
道徳の柱はこの教えの中にあったといいます。
それが明治維新で近代化を急ぐ中、こうした仏教が教える道徳を日本人は過去に置き去りにしてしまいました。その代わりに明治国家は「宗教の代用品」として教育勅語を作ったと。
教育勅語というのは近代の国家主義が儒教や神道をつぎはぎして作ったもので
そこに深い哲学というのはないのだそうです。今はその道徳すら日本で教えられていません。
きちんとした精神教育がなされていないから
多くの日本人には精神のバックボーンが形成されていないのですね。
なので「良い学校を出て、一流企業に就職して、たくさんお金を稼ぐのが善」という
俗っぽい考え方が広がり、多くの人が欲望の虜になってしまっていると。
共感すること多くありました。対談本ですが対談相手の稲盛さんも大変尊敬する
日本を代表する名経営者のおひとりで、ひとつひとつの言葉に含蓄があります。
教育について考える際にお薦めしたいと思いました。

著者はFOXEYの社主、デザイナー。この方のエッセイ、「強運」シリーズは
好きで過去にも読んでいました。本から受ける印象として前田義子さんというひとは
とても誠実で謙虚で、また他人の心の細かい襞にも敏感な思いやりのある方なんだなと思います。
思い通りにするとは無理を通すことではなく、与えられた条件下でベストを尽くすからかなうもの。
一日一日を心を尽くし、大切に生きることを忘れないようにしたいと思いました。
今月、読んだ本はあと4冊。合計9冊でした。(^-^;

