
今月、とても面白く読んだ本がこの2冊。
歌舞伎役者の故・坂東三津五郎さん、落語家の春風亭昇太さん、
大のお城ファンであるというお二人がそれぞれ城歩きについて
独自の視点から解説してくれている本です。
春風亭翔太さんの本では主に中世城郭、
坂東三津五郎さんの本では戦国、江戸期以降の近世城郭が
紹介されています。
どちらもそれぞれ良かったですが、個人的には
春風亭翔太さんの本のほうがより強く印象に残っています。
落語家ならではの昇太さんの面白おかしい語りがそのまま文章になっていて
非常に読みやすいのと、昇太さんのお城に対する情熱が半端なく伝わってきて。(*^-^*)
中世のお城ってどうしても山の上にあってアクセスしづらいし、
空堀と土塁しかないところ・・・と
いう思い込みを持っていたのですが、
見方によってはこんなに楽しいものなのか~と
中世城郭への興味を掻き立ててくれる内容でした。
中世のお城をみるときは当時の攻め手と守り手がどんなふうに戦ったのか
想像しながら見て周るのが楽しい、とのこと。
お城は攻め手をどうやって撃退するかという視点から設計されているので
攻める側、守る側、それぞれの視点から見て周るといろいろなものが見えてきそうです。
三津五郎さんの本では信長以降の近世城郭について紹介されています。
三津五郎さんも本当に歴史好き、お城好きな方だったんだなあと・・・!
全国のお城でも有名どころばかり紹介してくれているので
内容的にも入っていきやすい感じです。
ハッとした記述があったのは信長が築いた安土城についての三津五郎さんの視点。
かつて来日したルイス・フロイスは岐阜城を「バビロンの混雑を思わせるほど」、
安土城を「ヨーロッパの最も壮大な城に比肩しうるものである」と記していました。
そんな革命的で画期的なお城でありながら、その後の安土城にその栄華の名残が
薄いのはなぜかというところに三津五郎さんは注目されています。
江戸時代から流行した歌舞伎でも赤穂浪士などとは正反対に
信長を英雄とした作品はひとつもない、という指摘も。
信長は後世の僕らが思い描くようなかっこいい英雄ではなかったのではないか。
本能寺の変があって、実は配下にあった諸大名はむしろホッとしたのではないか。
~中略~
信長という人間の所業には皆、震撼とさせられていて腹に据えかねることも多く、
だから秀吉、家康らも信長没後、その弟や息子の扱いをみてもとても尊敬していた
ご主人様の肉親に対する扱いではない。
リアルにあの時代を生きていた武将たちの実感ってまさに三津五郎さんの
指摘通りなのではないかと感じました。
昇太さんの本の最後にお二人の対談があります。
滋賀の人は「本能寺の変がなかったら滋賀県が日本の首都になっていた」と
言うけれど、それもどうかと仰っています。
信長は近江の次は大坂、そして朝鮮半島への進出を考えていたのではないかと。
信長の跡を継いだ秀吉が大坂城を築き、朝鮮出兵を企てたのも、生前の信長から
そういう計画を聴いていたからではないかと。
こんな推測も歴史ファンとしては面白いなと思いながら読みました。(*^-^*)

先日、NHKスペシャルで「東京裁判」のドラマを観ていたときに
ドラマの中でオランダのレーリンク判事と著者の間に交流があったことを知り興味を持ちました。
著者、竹山道雄はドイツ文学者、評論家。
東京帝国大学を卒業後、一高で教鞭をとっており、
多くの教え子を戦地へ送った・・というようなことをレーリンクに語っていました。
それでこの人はどんな著作を残した人なのだろうと
調べてみたところ、「ビルマの竪琴」という小説がヒット。
ずっと昔、中井貴一さん主演で映画化されていたのを覚えており、
タイトルだけは記憶にありました。
この作品は戦後、子供向け雑誌に掲載するために依頼されて書き上げた
竹山道雄氏唯一の小説なのだそうです。
実際読んでみてもとてもわかりやすい文体でありながら、
心に強く訴えるものがある内容でした。
終戦直後、人々の間の価値観の変容は急激なもので
戦死した人の冥福を祈るような気持ちは新聞や雑誌にはさっぱりでなかったそうです。
戦った人は誰もかれも悪人という調子でとがめられ、日本軍のことは悪口をいうのが
流行で正義派だったと。
人間というのは当事者でないと本当に調子がいいものです。
著者は戦時中に自分の教え子の葬式に呼ばれた経験を何度もしています。
どの葬儀でも棺はなく、あっても空だったそうです。
かつての教え子たちに戦場で先立たれた著者としては
どうしても野ざらしの英霊たちをとむらいたいという気持ちからこの小説を書いたと。
知る人もいない異国の地で散っていった若者たちの心の裡はいかばかりだったでしょう。
また愛する家族を失った遺族の立場になってみると
世間の声が「戦った人々を非難する」トーンに変わっていく状況は
どんなに悔しく苦しいものだったかと想像されます。
終戦を経て急速に人々の意識が変わっていく中で、
戦後を生きる子供たちに国のために戦って命を落としていった先人たちのことを
決して忘れることのないよう、そういう強い思いでこの作品を記したのだろうと感じました。
この他に読んだ本は下記の通り。


今年前半は仕事が忙しくてなかなか読書する時間を捻出できませんでした。
秋以降、仕事を辞めたら辞めたでこれまた忙しくて・・・(^-^;
来年は静かなところで暮らすので本を読む年にしたいなと思います~
