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先月読んだ本の中での一番はこれ。
生死ギリギリのところに置かれた時に人間の心理はどうなるかということが書かれた
「野火」がインパクト大だったので、こちらも読んでみることにしました。

著者の太平洋戦争での従軍経験に基づく小説です。
アメリカ軍の捕虜となり同じ収容所で出逢う日本兵たちの人物描写が
それぞれの内面を抉っていてすごい。

それから、昔、「戦場にかける橋」という映画があって戦時の日本軍による
捕虜虐待が描写されていましたが、この小説の中での
米軍による捕虜に対する扱いがあまりにも対照的で
(とてもきちんとしていて)驚きさえ感じました。

読んでいてはっとするところも多々。
誰かが卦をたてる場面があってそこでふと主人公が考えるのが
「なぜ死を一番の不幸と考えるのか」という下りであったり。

広島への原爆投下を人づてに聞いた主人公が思うことで印象に残ったのが
「戦争の悲惨は人間が不本意ながら死なねばならぬという一事に尽き、その死に方は問題ではない。」
という下りです。

原爆という新型兵器がもたらす惨禍は空前であるが、中世人が初めて大砲の殺戮力をみた時も
隣人が矢によって貫かれ、鉄力によって切り裂かれるのをみた原始人も程度の差はあるが
その衝撃は同じではなかったかということ。死ぬ当人にしてみれば同じであるということ。

また戦争が終わったことを我々は「敗戦」といわず「終戦」と呼び、
その後日本へやってきた米軍を「占領軍」ではなく「進駐軍」と呼んでいました。
そういえば戦時中も負けに次ぐ負けで、撤退することを「転進」という言葉を使っていました。
このすり替えるメンタリティは戦後になってもあまり変わらなかったのだなと。

各所にみられる著者の鋭すぎる視点が大変興味をひきます。
他の著作もぜひ読んでみようと思っています。

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美輪明宏さんと瀬戸内寂聴さんの対談本。
二人が共通して知る三島由紀夫についての下りが興味深かったです。
三島の小説は私も好きで過去にいくつか読んだことがありますが、
そこから浮かびあがる三島由紀夫像というのは心に一切の混ざりものがないというか
とても澄んだものを感じるのです。

実際に三島と交流があったお二人も彼については「赤ちゃんのように純粋だった」とか
「潔く清く正しく、優しくおもりやりのある人物だった」と評していました。
そういう人は文壇や世間の卑しさというものに耐えられなくなってきたのでは
なかっただろうかと。
そんな三島は日本人の美意識が完全に崩れていくのを一番恐れていたそうです。
いまやアメリカの文化植民地になり果ててしまった日本は彼の予言通りになっているとも。

ノーベル文学賞にも何度もノミネートされていながら
とうとう受賞が叶わなかったということもありましたが
これにまつわる話も印象に残りました。
川端康成が受賞した年、本当は三島由紀夫が受賞するはずだったそうです。
ある間違った情報が理由で受賞が川端康成に決まったそうですが、
川端康成は本来なら三島由紀夫がもらうはずだった賞を自分が取ったということで
その後随分良心の呵責に苛まれ、病んでしまったということがあったらしいです。
川端康成もやはりとても繊細で謙虚な面を持つ人だったのだなと思いました。

美輪と寂聴さん。お二人の人間としての器の大きさ、幅の広さは
その山あり谷ありの波乱万丈の人生によって形作られたものなのでしょうか。

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暫く前のベストセラーです。まだ読んでいませんでした。(^-^;
心理学では人間が伝達する情報の中で話す言葉の内容そのものが占める比率はわずか7%なのだそうです。
言葉ではわずか7%しか伝わっていないということ。
なので残りの93%を占める「ノンバーバル・コミュニケーション(言語以外の伝達)」のほうが伝達力が高い。
それには話す声やテンポ、雰囲気なども含まれ、そういうものを全部ひっくるめて見た目とすると
言葉だけでつながるSNSなどで感情的な行き違いによるトラブルが起こるのもなんとなく納得してしまいました。

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「テルマエロマエ」の原作者です。
著者のヤマザキさんも美輪さんや寂聴さんに負けないくらい
山あり谷ありのジェットコースターのような人生を歩んでこられたのですね。(^-^;
彼女にはそれを受け入れるだけの人間的な大きさを感じます。
ここがとても魅力的。
両方ともとても面白くて、他の著作も購入してしまいました。

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数が全てではないですが、一応、一か月あたり10冊を目標にしています。
10月はなんとか達成。向う数か月は時間的に余裕ができるのでもっと読めるかなと思っています。



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