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大学生の頃、友人と二人で3週間ほどインドとネパールを旅行したことがありました。
当時の世間知らずな自分たちにとって、あの地で目にしたあらゆる事柄が強烈なカルチャーショックでした。
観光地でない普通の街角や、寺院、知らず知らずのうちにに踏み込んだスラムでは
どこからともなく現れた物乞いの人たち(それも10人、20人くらいの数で・・・!)に身動きできないくらい
取り囲まれ、金銭をねだられるということが何度もありました。
「バクシーシ・・・!」という言葉と共に目の前に差し出される無数の手。
その中には指が欠けて3本、あるいは4本しかない手がいくつかありました。
また片目がつぶれていたり、片足しかなくて松葉づえをつきながら駆け寄ってくる人もいました。
それはネパールのカトマンズに行った時のほうが更にひどくて、そこで見た物乞いの人たちの
障害の度合いはもっと目をそむけたくなるようなものでした。
道端の溝の中に骨と皮だけになった人が横たわっていて、そこから喜捨を求める手が私に向けられていました。
垢にまみれたボロボロの衣服の子供たちが「写真を撮って!」といいながら駆け寄ってきたことがあり、
写真を撮ると「撮影代をよこせ」となかなか強かに交渉してこられたこともあって。。。
当初、手や足が欠損した人をみた時に、彼らは病気で身体の一部を切断しなければいけなかったのだろうかと
思っていました。日本に帰国して旅行の話を周りにしていたら誰かから「それは見た目の悲惨さを増すために
大人がわざと子供の身体の一部を切断し、物乞いさせているんだ」ということを言われたことがありました。

今月はこの著者の作品を5冊、立て続けに読んでしまいました。
急速にグローバル化が進み豊かになる新興の国々でその発展から取り残され世の中から
顧みられない人たちが今も非常にたくさんいること、またそのひとたちの貧困の度合いは
先進国に住む人間からすると想像もつかないものであること・・発展の影の部分で生きる人たちに
ついてのルポです。最初に読んだ戦後の日本の浮浪児についての本の内容があまりにも衝撃的だったので
一気に他の著作も読んでしまいました。少し前に原発事故の後で福島原発に潜入取材をされた方の
本を紹介しましたが、この本の著者もすごいです。取材の対象となる人たちの後ろにはやはりマフィアという
存在があるのですが、そのマフィアの中に入っていってそれこそ命懸けで取材された下りも書かれています。
一歩間違ったら命の保証さえない状況でよくここまで深く入り込んでみてこられたのかと思います。

一気に何冊も読んでしまったのでどの本にどのことが書いてあったのか記憶が入り乱れているところも
ありますが、やはり暗澹とした気持ちになったのは多くの国でマフィアのひとたちが貧困者らを利用して
ビジネスにしているということでした。
そしてそのビジネスを助長しているのは知らず知らずであっても我々のような豊かな国に住む人間であることです。私が旅から戻って聞いた話も事実のようでした。マフィアが田舎の貧しい村にいって赤ちゃんを誘拐してきたり、安く買ってくることがあるのだそうです。そこで誘拐された赤ちゃんたちは5歳くらいまでは他の物乞いたちに一日あたりいくら、で貸し出されるそうです。
そのシステムは「レンタルチャイルド」と呼ばれています。大人が一人で物乞いするよりも小さい子供を
抱えながらのほうが更に可哀想・・・と思わせることができるからです。

私がインドに行った時も赤ちゃんを抱えた女の人が悲壮な顔つきで
「この子に昨日も何も食べさせてないんです」と寄ってこられたことがありました。
本当の親子だったのかもしれないですが、もしかしたら「レンタル」されていた赤ちゃんだったのでしょうか。
夕方にはマフィアのところに返却される赤ちゃんたちを世話するのは同じくマフィアの支配下にある
貧しい村から売られてきた売春婦の女性たちです。
小さい子が同情をひく利用価値があるのは5歳くらいまで。その年齢を過ぎると女の子の場合は
売春を強要されエイズにかかって発症するくらいまでにならないとその世界から抜け出せない。
男の子の場合はマフィアたちが目を潰したり、腕や足など身体の一部を切断したり、顔を焼いてケロイドを作り、
物乞いに行かせる、、、そうすると普通の健常者が物乞いするよりも遥かにたくさんのお金をもらえる、、
そんな現実があるそうです。

少し前のUNDPの統計が記載されていましたが、
世界全体で一日1ドル以下で暮らしている人は12億人、5人に1人です。
一日2ドル以下で暮らしている人は30億人、2人に1人。
この数字をどうみるでしょうか。

若かった頃にバックパックを背負って一人でアジアを旅したことが幾度となくありました。
若い時の経験は強烈に脳裏に焼き付くようです。
その時に目にした人々の貧困が私の記憶の中にずっと残っていたことが
この本を手にしたきっかけなのかと思います。
今でも都会に行って街の華やかなブランドショップやイルミネーションを目にするとき、
時々、昔、自分が目にした光景を頭の中で思い出すことがあります。
そういう時はなんとなく罪悪感のような居心地の悪さみたいなのを感じます。
日本で安い、安いと喜んで買って、飽きたら簡単に捨ててしまう
アパレル製品もアジアの最貧国にある工場で
一日2ドルくらいのお給料で働く人たちが作り出したものです。
私たちの豊かで贅沢な暮らしの陰にその数を遥かに上回る人たちが搾取され、
貧困にあいでいる事実を知っているのと、無関心なのとでは何か違うのではと思います。

それから物質的な悲惨さに加えて私の中でもっと心を抉られる想いだったのは、
ストリートチルドレンとして生きる子供たちの生い立ちです。彼らには
「愛情」とか「他人とのつながり」、「他者からの承認」というものが絶対的に欠けているところです。
物心ついた時には路上で物乞いをさせられ、親の愛情というものを知らずに育つ彼ら。
自分の目をつぶしたマフィアのような人にでさえ、お金を稼いだら褒めてもらえるからと
一生懸命気をひこうとする姿が描写されていてとても切なかったです。
日本でもですが、貧しさ故に犯罪に走る人と走らない人がいます。そこを分けるのがその人がかつて
他者からの愛情を受けて育ったか否か、あるいは周囲から自分の存在価値を認められていたか
というところではないかと感じています。それほど「他者への無関心」というのは罪深いものではないかと
この一連の著作を読んで思いました。

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チルチルとミチルの兄妹が主人公のメーテルリンク作「青い鳥」はとてもよく知られた「童話」だと
思っていました。実はこれは実は戯曲として書かれたものだったそうです。
幸せの青い鳥を探して遠くまで行った幼い兄と妹。冒険の夢から目覚めた二人の
すぐ近くの鳥かごにその青い鳥がいたというあらすじで「幸せは見過ごしがちな足元にある」という
教訓ものかと思っていましたが、本当は違うのだそうです。この戯曲にはその後があるのです。

兄と妹は貧しいながらも幸せに暮らしました、という終わりではなく、その青い鳥は結局、
二人のところから逃げていってしまうのです。青い鳥を返して下さい、と舞台から叫ぶ兄の姿の
ところで幕が下ります。幸せの青い鳥は何を象徴しているのでしょうか。

青い鳥の物語は人生はとても虚無的なもので、人間は決して永遠の本当の青い鳥を捕まえる
ことはできないのだということではないか、という著者の問いかけで始まります。
とても読みやすい文章でとても深い内容です。

安易に手に入る幸福や希望はこの世にはない、幸せが「どこかにある」というわけでもない、
でも人間には青い鳥に象徴される希望とか幸福、幻想が必要だということ。
青い鳥は逃げていってしまう、それではどうしたらいいのか?それに対してメーテルリンクは
語っていないのです。

チルチルとミチルは冒険する途中でいろいろな世界をみます。
そこで出会った一人がカシの木のおじいさん。「お前の父親にわしの一族がたくさん殺された」と
怒りをもって迫ってくる場面があります。チルチルとミチルのお父さんは貧しい木こりです。
この下りを読んでどこか日本の神道のような思想を感じました。
こうした神道的な思想はアニミズムといわれ、日本だけでなくキリスト教が広まる前の世界各地に
あったものの考え方です。

大昔はそれぞれの地域で自然を畏敬し、自然と共生することを大切にする価値観がありました。
でも人間がこの地上の支配者だとするキリスト教思想の広がりと共に
人間は自然を共生の対象ではなく「征服」の対象としてみることになりました。

メーテルリンクは何十年も昔にこうした西欧キリスト教文明の限界に既に気づいていて、
警鐘を鳴らしていたのではないかと感じました。
キリスト教という一神教がもたらすもうひとつの暗い側面。
これは今の世界に起こっているたくさんの問題の根本的な原因になっているように思います。
五木寛之さんのエッセイは深い知性と仏教的思想に裏打ちされた読みやすい本が多く
時々読みます。人生でたくさん苦労されたゆえの優しさも感じます。これからもっと読んでみたいと思います。

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堀江さんの本はあえてこの反感を買うタイトルが面白いなと思って読んでみました。
この方についてはライブドア騒動の時のメディアを通しての印象しかないのですが
中味を読んでみると守銭奴的なイメージとは違う考え方をもっておられる人なんだなと感じました。
でももっと年配の大企業の経営者の方々の著書から感じるものとは異なり
やっぱり今の時代のひとなのかなと。特に投資やベーシックインカムについての章など参考になりました。

蛭子さんの本も同じくブックオフで100円コーナーにあったので買ってみました。
偶然この二冊を中味も見ずに同時に買ったのですが堀江さんとは全く対照的な価値観。
大事なことの芯はしっかりしたものはあるけれど全体的にとてもゆるゆるな感じです。
この方はそういえば本業は漫画家。作品を拝見したことはないのですが
結構グロテスクで残酷なものも描かれるらしく、テレビに出るようになってから
その作品と本人のイメージの乖離に漫画があまり売れなくなってしまったそうです。(笑

他に読んだ本↓ 今月は10冊。(^-^; 今年も年間100冊。できたら150冊くらいを目標にしたいと思います。

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