
今年のノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智氏のことを知りたくて
読んでみた2冊です。毎年2億人を感染症から救う薬の研究に携わり
数多くの実績を成し遂げた大村氏は決して最初からエリート街道を
進んできたというわけでもなかったようです。
この方の人生を読んでいるとまさに本の帯に書かれている通り、
「至誠天に通ず」、そのものの生き方をされてきたと感じます。
誠実な研究者である上にたくさんの実行力を備えた方。
夜間高校の教師から化学者に転じ、産学連携から得たロイヤリティーを
研究現場に還元させました。その額250億円。
これが多くの後輩らの研究を後押しし、
更なる研究の成果につながったことは間違いありません。
また経営者としての顔もお持ちでした。
破たん寸前の北里研究所を立て直し新しい病院を建設。
この時、殆ど財務の知識がなかったのでその勉強のために財務関連の本を
100冊くらい読んで独学で知識を身に付けたとのこと。
人材育成者でもあり、卓越した指導力をもつ方でもあります。
そして、化学・医学の世界の人でありながら、美術にも大変造詣が深い方で。
絵画のコレクターでもある大村氏は女子美大の理事長を長年務め、美術館も建設されています。
「人生に美を添えて」には多彩な美術評論など、化学者とはまた違う大村氏を伺うことができ、
氏の人間としての幅の広さに驚かされました。
北里大学メディアルセンターは大村氏の研究成果により得た特許料をもとに事業を展開した
病院ですが、「美術館のような病院」を目指して作られたそうです。
病院内の写真を拝見しましたが、所有絵画1700点、常時350点を展示し、
まるで美術館と見間違うかのようです。
またエントランスホールは音響効果を考えて設計し、グランドピアノを用意、
定期的にコンサートも開催されているとか。
「20世紀は科学技術が進歩しましたが心の問題が取り残されました。
21世紀は心を大事にする病院が必要です。~(中略)~
これからの病院は病気を診断し、治療するだけでなく心を癒す機能があるべきと考えたのです」
と仰っています。美術館は普段行き慣れていない人にはちょっと敷居が高いけれど
病院なら抵抗なく入れる人も多く、毎日たくさんの人がやってくる病院に絵を飾れば
より多くの人に芸術に触れてもらえる、エプロン姿でふらっとこれる美術館を目指したと。
印象に残ったのはどの辺に書いてあったのか忘れましたが
直観も普段の鍛練があってこそ、という下りでした。
いざという時に天啓が降りてきたような判断が下せるのも
普段の地道な努力があるからこそだと。
こうした大村氏を陰で支え続けた奥様、10数年前にお亡くなりになったそうですが
この日のことを天国から喜んで見守っておられたのではと思います。
陰惨な事件が多かった今年、心が洗われるような気持ちになり、
また同じ日本にこのように立派な方がいらっしゃることに誇りを感じました。(*^-^*)

よく読ませてもらっている書評サイトで話題になっていた本。
著者の方、本業は歌手でヨットも登山もど素人。この女性が百戦錬磨の冒険家である45歳の
「隊長」と、早大探検部の「ユースケ」、元自衛隊パラシュート部隊の隊員「こーちゃん」の4人で
ヨットで一年間かけてニューギニア島探検に出た記録の本です。でも元自衛隊員は早々にリタイヤ。
久しぶりに驚愕な本でした。(笑) お風呂にも入れない、トイレのない冒険の日々、
うーん、ここに書けないくらいグロい場面もいっぱい。
ニューギニアの奥地で出会った元人食い族の人たち。
詐欺に遭った話、戦時中にこの地で亡くなった日本兵の遺骨発掘の話。
想像を超えるような展開が次々と。天井も床もゴキブリで真っ黒、という描写の場面は
背中がぞっとしましたが。
男性でも途中でリタイヤしてしまう過酷な旅で、本人もギリギリな精神状態だったと
書いておられるけれど、それでもどこか、この過酷さを楽しむ余裕が見受けられ、そこに
彼女の強さを感じました。刺激度の高い本で面白かったです。(^-^;

一年の最後にこうした立派な本に出会えたことに感謝したいと思った一冊でした。
「戦時中の東大病院精神科を支えた3人の医師の一人」という著者。
ハンセン病の療養所を訪れたことをきっかけに7年がかりで執筆されたそうです。
この本を読んで生きがいとは何か?という答えは見つからないと思いますが
生きること、生かされていることを反芻して考えてしまう本でした。
行間に著者の慈愛が感じられ、優しく見守られているような気持ちになります。
心に残る言葉がところどころに出てきました。
「人間の心の本当の幸福を知っている人は世にときめいているひとやいわゆる幸福な
人種ではない。かえって不幸な人、悩んでいる人、貧しいひとのほうが人間らしい
素朴な心をもち、人間の心を持ちうる、朽ちぬ喜びを知っていることが多いのだ」という下りも印象に残りました。
物事の奥行を認識できるのは二つの目があるから。
普通の幸せな視点と、苦しみぬいた視点の二つからみることで人生への洞察も深さを増す、というところ。
人生の災難は少ない方が良いけれど振り返ってみると辛かった時に学んだと感じることは
多くあると思います。他人の心の細やかな襞に対してでであったり、その人が抱える悲しみであったり、
他者への共感、理解ができるのも自身の経験した過去があるから。
帯部分にも書かれているようにいまは混迷の時代。
こういう時にこそ自分の芯となるものを持ちたい、その一助になる一冊かと思います。(*^-^*)

ナポレオンヒルの本も、今頃?なベストセラーで、一応読んでみました。
これもいかにもアメリカ人的成功論な本です。下巻もありますが、読もうかどうか迷い中。
どちらかというと先月の「7つの習慣」のほうが内容的にも心にすとんとくるものがありました。
吉元由美さんは杏里さん、中山美穂さん、平原綾香さんらの曲の作詞を手掛けている方。
厚みのある大人の女性のエッセイでした。

厚切りジェイソンさん。金スマに登場されていて初めて知りました。
エリートビジネスマンでもあり、お笑い芸人でもあるとても優秀な方で。
茂木先生の本はこれもすごくわかりやすく書かれた本で昨日一日で読んでしまいました。
来年もたくさんの良書と巡り合えますように。
