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ちょうどお彼岸でお墓参りのことなどが話題に出る時期だったので読んでみた一冊でした。
なんと日本では江戸時代まで墓参りの習慣がなかったのだそうです。
中世の時代のお墓には個人の名前や家の名前なども書かれておらず
遺族は遺体や遺骨を特定の場所に搬入して埋葬してそれで終わり。
重要なのは葬送の地に運んで葬ることで、実際の遺体や遺骨がどこにあるかは
関心の外だったという。というのも死者は死後「お墓」にいるのではなく「極楽浄土」に
行ってしまうから。

一般庶民がお墓を建てて墓参りを習慣とするようになったのは江戸中期以降、
つまり社会が安定し、永続的に受け継がれる家制度と観念が定着してからのことだとか。
それ以降、死者は墓地に埋葬され、その人間の存在の記録として墓石に名が刻まれ、
子孫が定期的に墓参する、先祖が常に家族の近くにいる、という概念が
一般化してきたそうです。
日本人の死生観は時代の移り変わりと共に変化してきたのですね。

最近になって必ずしも死後はお墓に骨を納めてもらうよりも、散骨や自然葬など新しい
埋葬の形を選ぶ人が増えてきているといいます。それを思うと、今、再び、
日本人の中には死生観に対する変化が出てきているのではと感じます。
私自身に子供はおらず、多分これからも持つことはないと思います。そうなると私が
死んだ後、誰がお墓の世話をしてくれるのかな?とふと疑問に思ったことがこの本を
手にとったきっかけでした。多分、私があの世に行く数十年先には日本人全体の中でも
お葬式に関する概念が大きく変わっているような気がします。
なんかこれを読んだらそんな先のことなど心配しても仕方ないのかも、と、思ってしまいました。その時には世の中もお葬式の概念も今とはすっかり変わっているのではないかなと。


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読みやすくて大変興味深い一冊でした。2時間くらいで読めてしまいますが
後で何度も内容を反芻して、考えてしまいました。
たけしさんのモノの考え方ってすごく柔軟。はっとする思考と着眼点。
それに物事の深いところにある本質をつかみ取るところがあって。
こういう人が作る映画がヨーロッパで高い評価を得るのもよくわかる気がしました。
書かれていること全てに同意できるわけではなかったですが、
世間一般で言われている「道徳」がいかに表層的にとられられているのか、痛感します。
そして本当に大切なことは何か、ということも考えるきっかけになります。
読書家で知られるたけしさんの知識の広さにも驚かされました。

2018年から「道徳」が教科化されるそうです。たけしさんは
「道徳を教えるのと良心を育てるのとは別のこと」と書いてみえます。
そして「道徳が役に立つのはむしろ不道徳な人間だ。いい人間のふりをしたければ
道徳の教科書を参考にすればいい」と。(^^; その例にあげているのがオレオレ詐欺。
例えも面白いです。読みやすいし、お薦めです。(*^-^*)

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「葉隠れ」というと、「武士道とは、死ぬ事と見付けたり」という言葉で有名。
佐賀鍋島藩の山本常朝が武士道における覚悟を説いた書物です。
武士道とは常に「死」を意識して生きるということであり、戦時中は政治的に利用された
経緯もありました。もしかして「死」を美化させるような危険思想なのかと思っていました。
三島由紀夫の解説で読んでみると、死を意識することで、冴えわたる「生」を
存分に生きるべし、みたいな感じの内容でした。
陰が暗いほど光の存在は明るく感じる、そういう逆説的な意味合いです。
ラテン語に「メメントモリ」という言葉がありましたが、それに近い概念だと思いました。
同時に深い人生論としても読める内容です。これも本棚に残しておいておりおり
手にとって読み返したい一冊でした。

この他に9月に読んだ本。以前から興味があったアーユルヴェーダについて
読んでみました。「アッコちゃん」はバブルの時代を背景にした小説。
出てくる人物の多くが実在の人物をモデルにしています。今となっては遠いバブルの
時代ですが、この頃、世の中を覆っていた価値観が今とあまりにも違うことに
改めて驚きを感じます。