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山本美香さん。フリーのジャーナリストとして世界の紛争地域の現場から
戦場の状況やそこに住まう普通の人々が置かれた立場について伝えてきた方。
彼女のまっすぐに前を見つめる瞳が印象的です。
強さと優しさを併せもち、それが外見の美しさに滲み出ているように感じました。
今月、この方の著作を4冊読むことになりましたが、
彼女の視線は主に老人や女性、子供、市井の人々など
社会的な弱者に向けられています。

以下抜粋~
国、政府、権力者・・・大きな力が働く時、些細なことは忘れ去られ、
ないがしろにされていく。弱い者は切り捨てられ、存在すら消されていく。
だからこそ不利な立場の攻撃される側の現状を伝える意義があると考えたのだ
~以上。

彼女の視点だからこそ知ることができた内容がたくさんあると思います。
本書の中には過去の著作「中継されなかったバクダッド」が掲載されています。
私もニュース映像で観た記憶があるのですが、
イラク戦争中、300人のジャーナリストが滞在していたパレスチナホテルが
被弾して二人のジャーナリストの命が失われるということがありました。
ガラスの破片が散らばりパニック状態になっているような映像だったと思います。
砲弾が撃ち込まれたのは山本さんたちが滞在していた隣の部屋だったそうです。
驚いたのはこれは米英軍による意図的な攻撃だったに違いない、と
著者が書いていることでした。

被弾したのはロイターの人。顔や首にガラス破片が突き刺さり、
血がどくどく流れ、目がつぶれたように腫れ上がっている・・・
これより数時間前にはアルジャジーラやアブダビテレビの人たちがいる場所に
砲撃が撃ち込まれやはり死傷者が出ていたそうです。
なぜ米英軍はなぜジャーナリストらを立て続けに攻撃したのか。

米軍に従軍するメディアは米国に都合の良い映像だけを流すけれど、
彼らは戦争のもっと悲惨な現実を映し、世界に伝えようとしていました。
そのあまりにも酷い現実をテレビで放送したら反戦世論がぶり返す
ことを米英軍はおそれたのではないかと著者は言っています。
「邪魔なメディアを黙らせる攻撃だ」そうとしか思えなかったと。
それが事実であるならば武力で言論を封じ込めようとする許せない行為です。

フセイン大統領の銅像が倒された時、喝采していたのは実際は僅かで、
カメラを少し引いてみると、その様子を見守るイラクの人々の表情は
とても悲しそうなものだったと。そんなことも現場にいて自分の目で現状を
みていた彼女だったから伝えらえたことだと思います。

パートナーの佐藤さんの
「我々がいなければ世の中が暗黒になってしまう。つまり抑圧者たちの
天下になってしまう。なんでもできてしまう。我々はその監査役でもあるし、
目撃者でもあるし、それを伝える責任がある」という言葉もとても印象に残りました。

報道の切り口次第で受け取る印象は真逆にもなり得ると思います。
そこに住む人々のリアルな声を少しでも多く世界に伝え、
伝えることで戦争をなくし、平和な世界に資することを願っていた
山本さん、2012年にシリアのアレッポで取材中に銃撃を受けて殉死されました。
彼女の存在を知ったのがその死を伝える
ニュースだったことがとても皮肉に思えます。
福島原発事故の取材も熱心にされていたそうです。
もっと活躍して欲しかったと本当に残念です。

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対人用の地雷は決して命を奪うことを狙っているわけではないそうです。
重傷を負わせ、激しい痛みにもだえ苦しんでいる仲間の姿をみせることで
心の動揺を起こさせる、また重傷を負った仲間の救助で他の兵士たちの体力を
奪い、すばやい行動をできなくする、そんな狙いがあるのだそうです。
この被害に遭った一般の人々の人生はどうやって償われるのか。
今、世界に埋められている地雷が1憶1千万個もあるそうです。

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今年は戦後70年。テレビをつけると関連の特集番組が放映されていることが多いです。
ここに書かれている内容は昔のことではなく、今のこの瞬間に世界のどこかで
起こっている紛争の現実です。朝、普通に目覚めて、仕事に出かけ
帰宅してパソコンに向かっている安穏とした環境にいる自分には想像もできないような
現実。書かれている内容があまりにも悲惨でここで抜粋するのも辛いくらいのことが
綴られています。著者は命をかけてこの現実を世界に伝えていました。
読んだ後もずっと心がざわざわしていました。平和な日本から外へ出ると世界には
今、この時にも命を脅かされ、大切な人を失い悲しんでいる人がたくさんいる、ということ。
どうしても遠くのこと、と無関心でいられなくなりました。
といって自分に何ができるのか、というジレンマも。
「知る」こと、「関心をもつ」こと、まずはそれが第一歩なのではないかと思います。




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著者の自伝が少し前に日経新聞の「私の履歴書」に掲載されていたので
興味を持って著作を取り寄せてみました。
日立のような重電企業は国からの仕事も多くてきっと安泰企業なのだろうとか
勝手に思っていましたが、数年前には7000億円を抱える赤字になっていたそうです。
69歳で社長に就任され、V字回復を主導した著者の言葉には説得力がありました。

印象に残ったのは「成長産業では前進し、
成熟産業からは撤退したほうがいい」という考え方です。
成熟している産業に身を置いている時には順風が吹いているように
感じるかもしれないけれど、それが永遠に続くわけではない。
数字をもとにきちんと見極めを付けることが大事だというところ。

この考え方は経営職ではなくても応用できるように思いました。
順風が吹いている環境にいると、やはり変化を欲しないように思うのです。
知らないうちに現状にしがみついてしまっているというか。
現状が良いとこれまた失敗や変化を恐れて現状維持に努めようとしてしまう
傾向があるように思います。
現実を見据えつつ倦まず弛まずの努力はどんな時も大切かと思いました。

今月この他に読んだ本。先月の「ガネーシャの教え」がすごく面白かったので
本屋さんで続編を探して一気に読んでしまいました。
最初ほどのインパクトはなかったですが、でも笑えて、とてもためになりました。
ベストセラーになるのもわかるような気がします。

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特別にこれという理由もなく、ブックオフで松本清張さんの本を
大量買いしてしまいました。(^^;
60年も前に書かれたサスペンス本。でも引き込まれます。
そして嫉妬の感情って本当に怖いものだと身震いしました。

あと、毎月、文豪といわれる人の作品を少しづつ読んでいます。

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「薄っぺらい・・・」の本は新聞の広告欄に載っていたのがきっかけで
読んでみましたが・・あまり読後感よくなかったような。(´・ω・`)

「おもてなし」はこれを読むのは二度目です。東京オリンピック招致以前に
書かれた本です。「おもてなし」という言葉が流行語になりましたが
「日本のおもてなしは、もてなす側だけでなく、もてなされる側にも
相応の振る舞いを求めるもの」という著者の見方が興味深かったです。

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