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久しぶりに司馬さんの本。
司馬さんのエッセイ71編をまとめ、没後5年目に出版されたものです。
独特の味わい深い文章を楽しみながら毎晩寝る前に少しづつ読みました。

文化と文明についての考察など興味深いです。
雑学ネタでは英語のBOSSの語源は真宗坊主の「ボンズ」がなまったものだとか、
(キリシタンにとって布教の邪魔になった)、
猫は中国から経典を取り寄せる際に、紙がネズミに食われてしまわないように
船に積み込んで一緒に連れてきたのが始まり、とかいう話も読んでいて
楽しかったです。

読みながら印象に残った言葉のあるページの隅を折っていきましたが
その箇所をここにメモしておきます・・・

ものは思いようである。好況はかえって人を盲目にさせ、
不況は人を思索させるようになる。

人間は生物として自然、大人になる。(中略)
経験と知識と判断力と調和の感覚、それに責任感それらが大人の属性である。
この属性は生涯みがかれねばならない。
ところが大人になるにつれて剥げ落ちるか、衰弱していく心がある。
想像力、空想力、さらにはそれを基礎として創造力への間断なき衝動である。
この3つはもともと天が平等に子供たちに備えさせている。
だが電池が減るように減ってゆくだけなのである。(中略)
右の3つのみずみずしい心を持ち続けている人々は干魚のような大人たちよりも
百倍も日常をゆたかに送れる幸せを持っている。

諸兄にぜひこれだけはお伝えしたいと思うことがあります。
明治文学をぜひお読みなさいということです。
江戸中期から明治時代というのは世界史の中でも
珍しい精神がぎっしり詰まった時代です。
江戸期といういわば教養時代が酒でいえば蒸溜されて
度数の高い蒸留酒になったのが明治の心というべきものです。

「他者を理解する、ということから、21世紀の幸福は出発するでしょう。
他者とはむろん個人個人の場合もあります。しかし、人間は文化なのです。
人間は生物学的あるいは生理学的存在ではありますがそれ以上に
文化としての存在なのです。」

「21世紀では普遍的文明は世界を覆うだろうということだ。
(中略) 英語などの共通語の普及、またはファッションなどの
ソフト面の共通化といった文化的要素の共有性が高まるだろうということである。
ただし、以下が大事なのだが、一方において、その大傾向に背を向けるようにして
少数者がはげしく自己主張し、多数者に背を向け、少数者が特異性を不必要までに
主張し、そのことによって多数者に顔色をうかがわせ、ときにバクダンを投げつけて
自己の存在を示そうとする時代がくるに違いない。しかもそのことが
集団(国またはその類似団体)の唯一に近い目的になりそうである。」

最後の文章は1985年のもの。日本のバブル経済が始まりかけた頃です。
その時、著者は既に30年後の世界を見据えていたのでしょうか。
司馬さんの文章はとても読みやすく、読んでいて説得力があります。
巻末のほうに文章の書き方として
一台の荷車には荷物は一個だけ積むようにしなさい」といってみえます。
ひとつのセンテンスにあれこれ欲張ってたくさんの情報を積み込ませない。
なるほど、これは大事ですね。(^^;

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アンミカさん。スタイルが良くて輝くような素敵な笑顔が印象的な方だったので
気になって手にとってみました。彼女の生い立ちを読んで驚きました。
四畳半の部屋に7人暮らし、給食費を滞納するほどの極貧生活を
送っていたことがつづられていました。
でもその子供時代を振り返る言葉には全く悲壮感がなく、
ご両親の大きな愛に包まれて育った様子がうかがえます。
特に彼女のお母様が本当に素晴らしい方だったのだと
その人間力に感服した下りがありました。

子供の頃、ある日、仲良しの友達から韓国人であることを理由に
親から一緒に遊んではだめと言われた、と告げられた彼女。
繊細な年頃にそんな差別に直面したらどんなに傷つくか・・。
家に帰って悲しい思いで、そのまま母親に伝えたところ、
彼女のお母様は
「あら、そうなの?済州島(両親の出身地)はご飯がすごく美味しくて
自然がきれいで家族が仲良しでとてもいいところなのよ。
明日学校に行ってそのことを教えてあげなさい」と言われたそうです。

私にもし子供がいて同じような境遇に置かれていたら
そんなポジティブな言葉を自然に言葉に出せるだろうかと考えてしまいました。
こういう時の母親の反応次第で子供は卑屈になったり
他人を恨んだりする感情を宿してしまうのではないかと思います。
こんな考え方をする親御さんの下で育って、前向きに物事をとらえる
思考パターンを身に付けてきたからこそ、
彼女自身が幸運を自然と自身に引き寄せたんだなーと。
良い感じでポジティブな気分になれる一冊でした。(*^▽^*)

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この10~20年の間に社会に非常に浸透してきている
「自己責任」という言葉。香山リカさんによると、
「トラブルに巻き込まれたその人が悪いんだ」と
何か理由があったと思い込もうとする、そうすることで
自分はそんなことはしてないから大丈夫、
だからそんな目には遭わない・・と考えて自分で自分を安心させる、
そう思うことで自分を守ろうとする心の働きがあるらしいです。
「自己責任」という言葉を声高に叫ぶひとの
心のひだに隠れているのは「怯え」という感情なのかもしれません。

今は普通に生きるだけでも大変な時代。
お二人の対談の中で平凡に生きているだけでも上等、と
仰っているところがあってそこに安心できました。
ナンバーワンにならなくていいけれど、
オンリーワンになるのもそれはそれで難しい。
そして「釣りバカ日誌」のハマちゃんみたいな人がいるほうが良いのです。

随分前ですが、それぞれ別の機会に香山リカさん、江川紹子さんの
講演会を聴きに行ったことがありました。
テレビや雑誌等のイメージとは異なり、
お二人ともとても柔らかい雰囲気を持った方だったという印象が残っています。
この一冊からもその講演会で受けた印象と同じように
香山さん、江川さんがもつ他者への思いやり、優しさを感じました。

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人工知能(AI)について書かれた本。
予想では2045年に人工知能が人間の知能を超えるとされているらしいです。
会話するロボットが登場したり、最近既にその萌芽がみられますが
ロボットが意識を持ち、感情を備え、そして人間を超える知能を持ち始めた時・・
私がこの本を読み終えた時の感覚は「わくわく感」と「恐怖感」が半分づつでした。

一番衝撃だったのは人間の脳のデータをすべて再現してコンピュータ上に
保存しておけば本人が死んでも意識がそこに残るので死んだことにならない、
みたいな話。でもこれ今世紀中に実現するかも、みたいなところまで来てるらしい。
そこまで行くと20世紀までの世界中の哲学とか宗教とか
全て意味を失うことになるなあ・・と。そんなことありえるのかと思いますが
30年前の我々がパソコンをポケットに入れて持ち歩けるような時代を
想像できもしなかったように、30年後の未来はやはり今の時代からは
想像さえつかないものになるのでしょう。

そういえばこの週末、たまたま深夜まで起きてたらNHKで
手塚治虫先生の特集をされていました。
手塚先生、気になる言葉を遺しておられます。
「将来、技術の発展は人間を滅亡させてしまうかもしれない」といようなこと。
2045年、病気しなかったらまだ生きてるなあ、私・・・(^-^;
どんな世界が見られるのでしょうね。滅亡する世の中になっていませんように。
なかなか興味深い一冊でした。

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精神世界の本の翻訳で有名な山川夫妻。
翻訳作品はまだ読んだことがないのですが奥様の亜希子さんのエッセイを
今月は3冊読みました。「前世」と「精霊と会話する」とか、
ちょっと信じがたい部分もあるのですが、でもスピリチュアル本は好きです。
起こること全てに意味がある、
ということがなんとなく腑に落ちて理解できたたような気が。

心に残ったのは
「自分の行くべき方向が見つからないとき、
子供の頃にどんなことが好きだったか、何になりたかったか、
どんなことに憧れていたか・・
子供の頃に幸せだった時の気持ちを思い出すことで
自分の原点がわかる」、と書かれていたところ。

それから「夜寝る前に感謝することを10個思い出すと人生が変わる」
と書かれていたところ。
最近、ベッドに入ってからその日にあった感謝することを10個思い出そうとするのですが
5つくらいしか思い浮かばなかったり、
考えている間に寝てしまうことがよくあります。
今のところなかなかちゃんとできませんが、
この作業は自分に何か気づきを与えてくれるような気がします。(#^^#)

今月はあとこんな本をよみました。

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安藤さんの「一生青春、一生チャレンジ・・!」な生き方かっこいいです。

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「三四郎」も久しぶりに読み直し。
明治時代の東京の様子がよく伝わってきます。
大学に入った時の気持ちをちょっと思い出しました。

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「運命とは・・」は変えられるというより、
しんどい時の心構えが参考になったという感じです。

1月は合計14冊読みました。
今年の目標として司馬遼太郎先生のエッセイや講演録を
読み込んでみようかと。
それから敬遠しがちな「古典」ジャンルの本も
少しづつ読んでいこうと思います。


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