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昭和15年、内閣総理大臣直轄の研究所として「総力戦研究所」が作られ
全国の官民からエリートたちが集められました。
平均年齢32-33歳、実社会に出て10年ほどの経験をもつ彼らは
若手の官僚、民間企業の社員、大学教員、新聞記者、軍人など
あらゆる分野のBest and Brightestな人たち。
 
昭和16年、彼らが研究所で負った任務は、模擬内閣を作り、
そこで「開戦するか否か」、「開戦したらどうなるか」
というシュミレーションを行うことでした。
16年8月、彼らの知性がシュミレーションの末に
たどりついたのは「日米戦日本必敗」という結論でした。
 
彼らがシュミレーションで出した結論は
「緒戦の勝利は見込まれるが、長期戦は必至であり、
そのうち日米国力の差に日本は耐えられなくなってくる、
末期にソ連が参戦、日本は敗ける。だから戦争は不可・・」
と、あとで観ると長崎・広島への原爆投下以外は
ほぼ全てその後の日本が辿る経緯を的確に予想していたのです。
石油を南方に求めるも、日本に運び込むまでのうちに輸送船は
米国に攻撃されて結局届かない、ということまで言い当てていました。
 
それではなぜ、日本は戦争に突き進んでいったのか。
数字上の結論、石油の枯渇という現実とは裏腹に当時の日本には
「開戦すべし」という空気があったといいます。
独裁者と思われている東條英樹は決して積極的な開戦論者ではありませんでした。
東條ならその地熱のように伝わってくる「開戦」への熱を抑え込むことができるのではと
内閣総理大臣に任命されたのですが、その東條も空気を変えることができなかったのです。
 
そこには制度上の欠陥もありました。
当時の日本には統帥部という政府が関与できない機関が存在していました。
統帥権は旧憲法の下では「神聖にして侵すべからず」ものであり
政府は関与できず、統帥部は政府とは別に作戦を発動できました。
 
この制度上の欠陥は山県有朋が生きていた頃は露呈しませんでした。
山県の人間的な迫力や見識、その器の大きさから、双方の矛盾を
抑え込むことができたのです。昭和になり、明治の元勲といわれた人々が
この世を去り、後を継いだのが東條でしたが、
彼は生真面目で優秀な官僚に過ぎず、山県有朋ではなかったのです。
 
「やれる」見通しはないのに「やる」という勢いが先行してくる、
その時に皆がすがった数字はつじつま合わせだけの数字でした。
決断の内容よりも全員一致のほうを大切とみる空気、
これが日本的意思決定システムの内実である、と著者は述べています。
 
敗けるとわかっていた戦争に日本を駆り立てたものについて
その流れを大変わかりやすく説明されています。
昭和16年、模擬内閣をつとめた若手エリート30数名の
戦後の経歴は大企業の社長、各国大使、○○総長、○○局長、など
綺羅星のごとくでした。しかし、誰ひとり政治家になった人物はいなかったそうです。
 
この本は昭和50年代、猪瀬さんが36歳の時に書かれた本です。
その頃は戦争で軍の中枢部にいた人たちがまだ存命していて
彼らに取材することもできたんですね。非常に緻密な取材と調査を
重ねた末に出された一冊だったことがわかります。
「総力戦研究所」の存在について知らなかったので、
大変興味深く読んだ一冊でした。
 
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1959年から1990年まで、31年間続いた旅番組「兼高かおる世界の旅」、
子供の頃、日曜日の朝になるといつもこの番組を家族で観ていました。
当時は私自身はあまり海外に興味はなくて、親のほうが熱心に
観ていたような気がするのですが兼高さんの美しさや、
しっかりとした自分の芯をもっておられるような佇まい、
品のある話し方など「素敵な女の人だなあ」という
憧れの気持ちを抱きながらテレビを眺めていました(#^^#)
 
現在の兼高さんは80歳を過ぎておられますが若い頃の好奇心が
全く衰えておらず、大変精力的に現在も旅を続けておられることなどが
書かれていました。まだまだあれもやりたい、これもやりたい・・
年齢を重ねてもそんな気持ちが湧き出てくることって
とても素敵なことだと思いました。
 
心に残った箇所がいくつか・・・
「誰にでも一生に二度、大転機迎える時があり、運のいい人は
それを取り逃がさず、いい波が来た時は上手に乗る、
まるで何かに導かれるように」
 
「晴れたら晴れなりに、雨なら雨なりに」
「これしかない」という発想は考えの幅が狭く、臨機応変に対応できないうえ、
自分の可能性をとことん試そうとしていない。あらゆる可能性を
試してみることが大切。
 
「人生にはいい人との出会いが大きな運をもたらします。
自分にどんな才能があってもそれを認めてくれる人、発見して伸ばしてくれる人、
それを世の中に広めてくれる人がいなければ埋もれてしまうのです」
 
意外だったけれど
「若い人は安い旅はしてはいけない」
 
とても読みやすい本でした。旅の好きな人には重なる部分もあるかも。(#^^#)
 
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集団的自衛権について反対する側と賛成する側、
集団的自衛権の行使を認めさせようとする側の論理が
知りたくて、石破さんの著書を何冊か買ってみました。
この方、テレビで話をされていても大変話がわかりやすいのですが、
本で書かれている内容も非常に論理がしっかりしていて明快です。
(「論理的だから正しい」といってるわけではありませんが。)
大変な勉強家な方でもあると思います。
もうちょっと読んでみようと思って、あと5-6冊買ってきました。
 
今月はあとこんな本を読みました~。合計で10冊でした。
 
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