
7月は吉川英治先生の「宮本武蔵」を読みました。
全部で8巻、結構長かったです(^-^;
剣の修行を通して己の人間性を高めていく
武蔵の半生が描かれています。
一番印象的だったのは1巻の終わり~2巻にかけてのところで
登場する宝蔵院の日観との出会いです。
ただただ強くなるためにひたすら修行する武蔵に対して
日観は「もっと弱くなれ」と言う。
武蔵のピリピリした殺気を纏う佇まい、ふるまいが
周りの人間をも警戒させ、彼らの心を武装させてしまう。
「周囲の殺気は影法師」、
悪い雰囲気の場所は実は自分自身が作り出しているのだという。
そして、ただ強いことが「本当の強さ」ではないということ。
考えさせられ、学ぶことが多かった反面、
珍しく感情移入しづらかったです、正直なところ。
だって武蔵さん、人を斬り過ぎ。( ̄▽ ̄)
吉川先生の代表作なので一度は読まねばと思っていましたが
個人的には「三国志」や「平家物語」の長編小説のほうが良かったです。
うーん、何か大切なものを読み落としているのかな。

年明けから少しづつ読んできた寂聴先生訳の源氏物語も
ようやく最後の10巻を読み終えました。(*^▽^*)
やっぱり最初の部分より、光源氏亡き後の
「宇治十帖」がすごく良かったです。その中でも特に「浮舟」。
1000年も昔によくこれだけ人間というものを観察して、
その心の動きを深く、微細に描写する作品が生まれたものだと思います。
資生堂の福原会長が、
「日本文学は平安時代の源氏物語で既にピークアウト」、
みたいなことを自身の著作で書いておられましたが、
この小説を凌駕する作品ってそうないように思います。
勝手気ままにふるまう男性たちの薄っぺらさに肘鉄を
くらわすような印象で終わる最後の巻は寂聴さんの解釈か
紫式部の深い洞察なのか。
そして、この時代に生まれていなくて良かった、という感想。(*´ω`)
貴族社会の世間の狭さには改めて驚きました。
日本人が空気を読まねば社会で生きていけないというのは
この時代からのものかと、なんか納得してしまいました。
お姫様に生まれてもしんどいし、庶民に生まれたら
それはまるで「羅生門」の世界でしょうし。
でもこの長編小説は読んで良かった、
時間をかける値打ちのある作品だと思いました。
