
番組としてテレビ放映されたものを書籍化した一冊。
振り込め詐欺の被害額は1300億円を超えるそうです。
そしてこの詐欺に関わっているのは殆どが20代~30代の若者たち。
詐欺集団は驚くほど緻密に組織化され、幹部クラスの人物は
一流大学を出て、かつては誰もが知る一流企業で働いていた、
という人物が多いそうです。
そしてまず捕まらない安全な立場に身を置いています。
なんだかもう「詐欺」自体がひとつのビジネスになっていて
その中に既に格差が存在していることに驚きました。
組織の末端、つまり、ATMでお金を引き出す役割の人物は
一回数万円の報酬で雇われ、警察に捕まるリスクを負います。
でも彼らが捕まっても、そこから幹部の身元がわかることはまずないのだそうです。
わからないような組織構造にちゃんとなっているんですね。
そして、振込み口座や携帯電話の名義は、一件につき、一万円も出せば
それを売ってくれる人が今はたくさんいる。
ホームレスの人が多く住む町に出かけて、名義をたくさん仕入れ、
一回、振込みに使われたら、携帯電話は折って捨て、
口座も閉じてしまう、それで結局、犯人は逃げおおせてしまうのです。
被害者の方々へのインタビューがありました。
多くがお年寄りです。月8万円の年金で細々と生計を立て、
老後のために貯めてあった数百万円をだまし取られてしまった老夫婦。
お父さんには障害があり、お母さんは少し前からがんを患ってみえるそうです。
「お金が足りなくて治療ができないので、もう癌の治療をやめようかと思っている」、
と答えている下りを読むと、胸の中に重いものがずしんと沈んでいくような
言葉にできない悲しみを感じてしまいました。
お金をだまし取られたショックで、自殺してしまった人もいるそうです。
一方で、詐欺をやっている、あるいはやっていた人物へのインタビューもありました。
都会のタワーマンションに住み、高級車を乗り回し、キャバクラで豪遊し、
「騙されるほうが悪い」と言い放つ彼ら。
「金が全て」であり、「全く良心は痛まない」と言ってます。
「セレブか乞食か」、今の時代はどちらかしかないという彼ら。
かつて詐欺でどっさり稼いだお金で起業し、今は普通の青年実業家を
やっている人たちもいるんですね。
この辺を読んでいると無性に苛立ちを覚えるのですが
実際、テレビ放映の時にもそういう反響があったそうです。
最後のほうに
「時代が彼らを生み出し、時代が彼らの後押しをしているという恐ろしい現実が
そこにはあった」と書かれていました。
いま、すごいスピードで変化しつつある日本の国(多分世界の他の国も)
その影の部分を見た気がしました。

インドの湧き上がる頭脳パワー、11億の消費パワー、
台頭する政治大国という大きく分けると3つの章から成り立っています。
正直なところ、後半部分は読んでいても、ちょっと眠くなってきて
ここに書くのはやめようかと思っていたのですが
前半の頭脳パワーの部分はやっぱりすごいなと思ったのでメモしておきます。
IT産業を中心に急発展し続けるインド。
産業立国ならぬ、頭脳立国の内情が書かれています。
ちょっとびっくりしたのは、インドのある大手IT会社(名前思い出せない 汗)は
世界各国のグローバル企業からシステム設計を請け負っているそうです。
例えばアップルとマイクロソフト、ボーイングとエアバスなど
同業種でライバル関係にある企業からそれぞれ仕事を請け負っているため
情報が漏れないよう、アップル用、MS用、ボーイング用・・と
それぞれ顧客用のビルを建設していて、
そこで働いている人達のセキュリティーも厳重に管理しているそうな。
このスケールの大きさに驚いてしまいます。@@;
日本で今後、これだけの投資ができる企業が出てくるのでしょうか。
インドの優秀な人材がどうやって生まれるのか、
その頭脳集団を生み出す教育現場への取材がとても興味深いものでした。
何がインドを頭脳立国たらしめたか、克明に追っていくと
「貧困」というインドのルーツにたどり着くのです。
ネルーが創設したインド理系の最高峰の大学IITは
MITより難関と言われているそうです。
長くイギリスの植民地だったインドは
産業革命をスキップされてしまったので、工業は育っていませんでした。
あるのはインド人の頭脳。理系エリート育成に特化しつつも
決してがり勉で頭でっかちな人材を作ることを目標とせず、
国家のために貢献し、ゼロから何かを作り出す独創性を備え、
リーダーとなれる人材育成を目指す・・
これがネルーの理念だったそうです。
インド全土から優秀な学生が集まり、そこで学ぶ。
学生へのインタビューで印象的だったのはその多くが
「自分のためにではなく、家族や地域、そしてインドのために勉強する」
「インドの発展のために貢献したい」と
真摯に語っている下りでした。
「地域のため、インドのために」という言葉が普通に出てくる。
そこで感じるのがとても自然な「愛国心」なのです。
(詐欺の本を読んですぐにこの本を読んだので
この時の私の中では非常な心の葛藤が・・・。)((+_+))
インド人の青年たちは「愛国心」とか「公のために」という
仰々しい言葉は使わないんですね。
「国」とか「公」という言葉が持つ漠然とした
イメージではなく、もっと具体的に「この人たちのために頑張りたい」という
対象が彼らにはある、という指摘が印象に残りました。
日本の場合はどうでしょう。周りの人達との絆が日に日に失われ、
そういう対象の顔がぼやけて見えなくなっているのではないかと思うのです。
あと、「金が全て」という言葉がまかり通ってしまう
今の日本の社会を覆う価値観を生み出したものは何なのか、
このインドの本を読みながら考えてみました。
日本は戦後からずっと経済発展一筋で突っ走ってきました。
日本人は戦争が終わった時、それまでの日本の価値観を全て否定しただけで、
きっちりと戦後の総括(反省というべきか)というものをしなかったと思うのです。
何が悪かったかを検証せず、また何を大切にするべきかを考えず、
全てにおいて経済優先で
国民にきちんとした愛国心を育てる教育をしてこなかったのではないか。
お金を稼いで豊かになろう、という目標だけを掲げ、
それに向けて一億人が発進してしまった。
経済がどんどん拡大していたうちは良かったけれど
バブルが崩壊して、唯一の目標が失われてしまったこの20年間に
その空隙から生じたひずみが、だんだん大きくなり、
この現状に至る・・・というのではないか、とか。
すみません、この辺、余談でした・・・(~_~;)
インドという国の政治の巧みさもなかなか面白く書いてありました。
そして華々しいIT産業の影で、自殺が後を絶たない農村の困窮のこととか。
グローバル化の波が世界各国の文化だけでなく
生活、その他いろいろなものを塗り替えていっているような気がします。

昨年、オノ・ヨーコさんのエッセイを読んでそれがとても心に響きました。
先日、本屋さんをうろうろしていたら、新しい本が出ていたので買ってきました(#^^#)
2009年12月から2013年6月までの間、ツィッターに寄せられた質問に
オノ・ヨーコさんがQ&A形式で毎週10問ずつ答え続けたやりとりをまとめた一冊です。
いろんな方面からの質問が100並んでいます。
それへのオノ・ヨーコさんの返事を読んで本当にすごいな、と思いました。
どの言葉からも彼女の優しさと器の大きさ、人間性の奥行きを感じるのです。
そして質問してくる相手のことを否定する言葉が
一切ないところにも気がつきました。
(「それは違うでしょう」、とか、「あなたの○○が悪い」とか
そんな言葉は出てこないのです)
人生というものを達観した立場から眺めておられるようにも感じました。
人生の振幅が非常に大きかった彼女だからこその言葉の数々かも。
彼女のように相手を大きく包み込める強さに裏打ちされた優しさ・・・
将来こうなりたい、と思う理想の姿でもあります。(~_~;)
この本には100の質問しか挙げられていませんが
やりとりのあった全てを読んでみたいなと思いました。
この他、今月はこんな本も読みました。