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外国人によって語られる日本の姿は日本人にとっては
あまりにも当たり前で、全く見逃しているものだったりします。
美点も欠点も「はっ」と思うことに気づかせてもらえたりして
こういう本を読むのは大変好奇心の刺激になります。
著者は日本や中国の文化、歴史に深い造詣があり
平均的な日本人ならとてもその知識に太刀打ちできなさそう。( ̄▽ ̄)
 
引用したい文章がたくさんあるのですが中でも
「日本の伝統的家屋は障子と襖を取っ払って初めて
日本のお座敷や居間の美しさが現れる」
という下りが印象的でした。
特に回り廊下を入れてしまうと雰囲気がとても良くなると。
著者は四国の祖谷に茅葺屋根の家を買ってそこで暮らしていたり
その後は京都亀岡の神社境内にある家に暮らしておられたそうです。
(こんなホームページを見つけました!)
 
そんな美しかった日本の景観は経済成長と共に、
「アスファルトと電線とアルミサッシとビニール」に覆い尽くされてしまい、
「世界一醜悪な国」になってしまいつつあると嘆いています。
「日本の山川は全部コンクリートになり、
風景の中にはどこにでも電線とパチンコ店があって美しい自然の景観を
壊している」とか、「京都という町は病気・・」とか、切り口が面白いです。
学者さんの文章じゃないので読みやすいですし。(#^^#)
 
著者がオックスフォードに留学していた時、チベット語を勉強されていたそうですが
チベット語の先生の奥さんがスー・チーさんだったそうです。
その時の彼女はごく普通の主婦だったそうですが
美しく、博学ではっきりとした考えを持っていて皆から尊敬される存在であったとか。
86年には京都大学にも留学されているそうです。
彼女の名が世界に報道されるようになったのはその数年後。
こんな逸話も興味深かったです。
 
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「陰翳礼賛」、「痴人の愛」、「細雪」についで谷崎作品は4作目。
SMとか借金を踏み倒す話とか低俗なものになりかねないテーマも、
文豪の手にかかるととても魅惑的 (#^^#)
この人の文章は耽美的と言われていたのだったか。
文体には湿り気を含む美しさがあるような感じです。
短編集ですが最後のほうにある「二人の稚児」「母を恋うる記」は
究極に美しい映像を観ているかのようでした。
(この2作はSでもMでもないです (~_~;))
近いうちに一度まとめて何冊か読んでみようと思います。
 
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白洲正子さんの著作は「かくれ里」に次いで2作目です。
読みやすいエッセイでしたが内容はとても深くて、
人生の本質を見極めている著者の視線が感じられます。
清少納言への温かいまなざし、人間が無心に祈る姿の美しさなど
僭越ながら共感するところが多く、もっとこの方の本を読んでみたいと思いました。
「本当に嫌なのがお葬式と結婚式」と書いてあったくだりには
思わず(あっ、私も同じ!)と思ってしまいました。(~_~;)
 
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NHKスペシャル取材班による番組の著作化。2010年頃に放映されていたそうですが
普段テレビをあまり観ないので知らずにいました。
今回初めて知った言葉が「行旅死亡人」、「直葬」という言葉でした。
前者は身元不明で亡くなった人(無縁死)のことを呼ぶそうです。
家族に引き取りを拒否されたり、孤独死する人の数は年3万人を超えています。
「直葬」というのは通夜も告別式もせず遺体を火葬するだけで全く儀礼を
行わない葬儀のことだそうです。田舎に住んでいる身からすると、どうも実感を
伴わないのですが東京都内ではその割合(直葬)は既に3割に達しているとか。
 
またこれも意外でしたが現在普通に結婚して家族(子供も)がいても、
正社員の仕事に就いていても、最後は無縁死になってしまう可能性は誰にでもあることでした。
時代の変化、グローバル化によってこれまでの地縁、血縁、社縁が
崩壊が崩壊していく。しかし、その反対に、新たなつながりが生まれてきつつあるという
希望を持てる話も最後にちょっと。平日の夜2日間で一気に読んでしまった本でした。
 
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久しぶりに池上先生の本を買ってみました。
テーマはなぜ学び続けること、教養を身に着けることが大切なのか。
池上先生は現在、東工大の教養課程で教えておられるそうですが
印象的だったのは、そこに至った経緯です。
「数学で会話する」ことができるほど優秀な理系の学生さんたちに
世の中はこうなっているんだよという常識を身に着けてもらうことが狙いだったそうです。
地下鉄サリン事件でサリンの生成に関わったのは理工系の高度な知識を備えた学生や
研究者たちでした。彼らが自分の専門以外のもっと広い世界のことを知っていたら・・・。
また原発事故の際、テレビで解説する専門家の中に文系の人にもわかりやすく
説明できる専門家が殆どいなかったということも指摘されていました。
それで、やはり一般教養は必要だということになったのだそうです。
「教養とはグローバル化の中で自分の立ち位置を知ること」と書かれています。
 
そういえば何かに捉われるとそのことしか見えなくなってしまい、
視野狭窄状態に陥ってしまうことがあります。
いろんなことを知り、客観的に物事を見つめる訓練ができていれば
世の中で出くわす多様な問題に感情的にならず、
自分の中では最善の対応ができるのではないかと思いました。
 
本を読み終えて、ふと思い出したのがこの夏に観た「風立ぬ」の映画です。
ゼロ戦を開発した堀越二郎さんをモデルにした映画でした。
堀越さんは決して軍国主義者ではなく、サバの骨の形にヒントを得て、
ただ、ただ、「美しい飛行機を作りたい・・」というその純粋な想いだけで
技術者としての生き方を求めた人だった、という感想を当初、抱きました。
でも、その後に百田さんの「永遠のゼロ」を読み、ちょっと思うところがありました。
ゼロ戦は史上最高の性能を持つ戦闘機として世界から恐れられましたが
性能を重視するあまり操縦者の安全性を軽視した設計になっており、
戦争が進むにつれ多くのパイロットが命を落としました。
飛行機に憧れた青年が最後には戦闘機の残骸の中に立ち尽くす・・
映画の中のこの場面が思い出されました。
 
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