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著者の堺屋さんのことはテレビや雑誌でよくお見かけしていましたが、
元官僚で歴史小説も書く評論家というくらいしか
知識がありませんでした。
 
この方が1970年の日本国万博を企画、開催を実現させ、
その後も沖縄観光開発、サンシャイン計画の推進、
最近では上海万博で日本産業館総合プロデューサーを務められるなど
多くのイベントを成功に導いた経歴の持ち主であるということを
遅ればせながら知りました。

人を呼ぶには、「非日常性」、「その場にしかない魅力」、
「聖なる一回性」というポイントがあるといいます。
そしてまず発想(意)を明確にし、方向性(企て)を確立し、
次には正確な手順で仕組みを作り上げ、予定通りの施設と催しを組み立てるという
プロセスが必要なのだそう。
それについての詳しい方法論が大変興味深く書かれていました。
 
著者が関わった数多くの博覧会についてのそれぞれのエピソードは
目からうろこ的な発想が多く、勉強になります。
 
日本初の万博開催を実現させるために
関ヶ原の戦を実現させた石田三成の手法を参考にしたという話は
大変面白かったです。
三成は「太閤の遺命、天下のため」という大義名分をたて、家康に反感をもつ諸大名を
口説き、奉行として培った人脈を使って自分よりもやや下級の策士たちと結びました。
トップを口説くという安易な方法はとらず、
三成は毛利輝元や上杉景勝らなど地方勢力から動かしました。
当時の著者は28歳の一係長。
偉くない人が大仕事をするにはこれしかないという手法なんだそうです。
 
また沖縄観光開発にかかわった下りでは、
ジョージア州アトランタの観光開発を
手掛けて成功したというアメリカの
ツーリズム・プロデューサー、アラン・フォーバス氏から
著者が教わった「アトラクティブス」の概念が印象に残りました。
 
「アトラクティブス」とは、
「あれがあるから沖縄へ行こう」と思える要素のこと。

そうしたものを重点的に開発することで、その土地をより魅力的な場所に
変えることができるのだそうです。
 
その例としてとりあげられていたハワイ。
1920年代まで亜熱帯農業と海軍基地だけの諸島だったハワイが
現在あれだけの大観光地になったのはプロデュースの力によるものなのだとか。
 
ハワイアン音楽のリズムを創り、ムームーのファッションを開発し、
フラダンスの演技を考え出し、ワイキキに砂浜を作り、
岬の山をダイヤモンドヘッドと名付け絶景と宣伝した・・・
これらはすべて人知の創造によるものだったそうです。
 
スティールギターで演奏するあの独特のハワイアン音楽のリズムは
ハワイ原住民の民族音楽から出たというよりも観光客用にプロデュースされ、
これがラジオや映画を通じて全米に世界に広げられたのだそうです。
多くの観光客は「あの独特の雰囲気が好きだからハワイに行こう」となります。
あのハワイの魅力が自然発生的なものではなかったということに意外性を感じました。
 
沖縄も「海とタレント」「琉球舞踊と沖縄民謡」「ショッピング」をメインに
アトラクティブスの創造により沖縄開発を進め、
現在の大観光地になったそうです。こういう経緯があったんですね。
 
またテーマパークについての章も身近にもいくつかあるので
興味深く読みました。
日本では1980年代から90年代にテーマパークの開業が相次ぎましたが
東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンを除いては
殆どがうまくいきませんでした。
なぜTDLは大成功し、その他大勢はだめだったのか、という分析も
へ~と思わされます。
 
人を呼ぶ事業(イベント)のプロデュースは思いつきや
格好つけで成功するものではなく
しっかりとした理念を設定し、コンセプトを明確化することが大切。
今後の日本はもの作りだけの国から、観光や移住などで「人を呼ぶ」
国や街づくりが大切になると思います。
そういう面で有益な情報が多く書かれている一冊だと思いました。
 
わずか250ページ程度の本ですが、著者の膨大な知識の反映か
中身がかなり濃いです。
最初、印象に残ったことを全部書いてみたら
文章が長すぎてまとめきれなくなってしまったので
だいぶ端折りました。@@;
これもまたいつか再読したいと思います。
 
 
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