
1月に京都を訪れた時のものです。
奥嵯峨にある平家物語ゆかりの寺、祇王寺を訪れました。
平清盛の愛を一身に受けていた祇王が
仏御前の出現により無残に捨てられ、尼僧となって
その後を過ごしたお寺です。

冬にも拘わらず、大変美しい苔の色が印象的な小さいお寺でした。
祇王も仏御前も白拍子。
一度、自分の舞をお見せしたいと、清盛の館を訪れた若い仏御前に対し、
清盛は当初、それさえ面倒くさがって追い返そうとしました。
心優しい祇王は、仏御前を可哀想に思って、
「私も同じ白拍子の身、会うだけ会っておやりになってくださいな」と
とりなしたのですが、結局、この一言があだになってしまいました。
仏御前の舞をひとめ見た清盛はあっという間に心変わりしてしまい、
祇王は清盛のもとから追い出されてしまったのでした。(T_T)

祇王はもはや、死んでしまおうかと思ったところを母と妹に引き留められ
21歳で出家し、このお寺に引きこもります。
しかし、ある日、訪れる人があったので戸を開けてみるとそこには
髪を降ろした仏御前がいたのでした。
自分だけが清盛の屋敷に残されたのが辛く、
またいつか自分も清盛に飽きられて捨てられるだろうと
自ら出家してきたのです。
この時代、社会的地位も低く、経済力もない女性たちは
男性の気まぐれひとつで人生を大きく左右されてしまう立場でした。
華やかだけれども移ろいやすく脆い浮世の世界よりも
彼女たちにとってはこのお寺の日々のほうが心安らぎ
幸せを感じるものだったのかもしれません。
建物(草庵)は明治時代に京都府知事が別荘の茶室を寄贈したもの。
訪問当時、一部お化粧直し中で、ちょっと残念でしたが
内部を見学することはできました。
平家物語の祇王のくだりに登場する
人物の木像が一列に並んでいました。

祇王寺に至るまでの道は結構細く、山奥にあり、
昔は殆ど人が訪れることもなかったのだろうと想像できました。
どんよりとした冬の寒空も相まって、
ちょっと物悲しい気持ちになってしまいました。

ただ、ここで過ごした祇王、母は大往生を遂げたという言い伝えに
なんだか心救われる思いも・・・。
