
なんとか読み終えました。((+_+))
ノモンハン事件~沖縄戦に至るまでの
大東亜戦争における日本軍の作戦失敗を例にとりあげ、
日本がなぜ戦争に負けたのかということを
組織論の様々な観点から冷徹かつ緻密に分析、検証した本です。
戦争論ではなく、組織論としてのビジネス書です。
作戦目的の曖昧さ、コンティンジェンシープラン(不測の事態への備え)の欠如、
極端な精神主義や、ある空気によって議論が支配されてしまう状況、
大失態を犯した人がまた別の作戦で幹部に任命されていること、
情報の軽視、濃密な人間関係の中で組織の意志が決められてしまったこと、
などなどなど・・・
なんだか「過去のこと」とは思えない。
当時の日本軍の姿の上に現代の日本企業の姿が
そのまま重なってしまうように思える内容です。
本の帯に書かれている「成功は復讐する」。
これは日本軍が過去の成功体験にいつまでもとらわれたままで
思考や行動が硬直的になってしまっていたため、
新しいもの、変化を拒み、戦略・組織を革新することができなかった、
それが最終的に負けの原因になったということです。
当時の日本軍が経験した過去の「成功」とは
世界の海戦史上、類稀な圧倒的勝利を収めた日露戦争での
日本海海戦でした。
世界はその後、どんどん変化し、
兵器も戦術もいろいろなことが進化し革新されていっていたのに
残念ながら日本人はあの時の強烈な成功体験を忘れることができず
新しく学ぶ、ということを怠ってしまったのです。
現代日本企業への警鐘として、
この本の第一版が出版されたのが1984年。
日本経済がまさにバブルの時代に突入する直前の頃です。
大東亜戦争でも最初のうちは日本軍は快進撃で連戦連勝だったのです。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた1990年頃までの日本と、
それ以降、なかなか浮き上がらず、不況、不況で閉塞感が漂う現在までの日本。
こういう部分も重なっているのでちょっと怖いです。((+_+))
日本軍は平時には大変有能な人材が揃い、優れた組織でしたが
想定外の事態には弱く、有効な対処法を全く見出すことが
できず、負け続け、その結果、多くの尊い命が失われました。
一昨年の原発事故発生の際の政府の右往左往ぶりや
杜撰な対応を思い出しても、
日本の組織の性質は結局、あまり変わっていないのかもと、
思わずにいられませんでした。(ーー;)
この本は防衛大学の教授4名と組織論の専門家2名の6名による共著です。
明快な論理で書かれていますが、学者さんの文章であるせいか、
大変難解な言葉と表現が多く、読み進めるのに非常に苦労しました。(*_*;
しかし、現代の日本の組織がいまだ抱えている病巣を突いた本でもあると
思いますし、30年も読み継がれているということを考えても、
読む価値は十分にあると思います。
実は「失敗の本質」を読む前にこちらを先に読みました。

上の本の内容をもっとわかりやすく解説した内容です。
現在、苦境に陥っている日本の大手電機メーカーや
イノベーションを成し遂げたアップルなど身近な企業の名を例にとり、
日本企業は、なぜこんな状況になってしまったか?ということが
平易な文章で解説されていて、とても読みやすかったです。
でも2冊読み比べると、検証と分析の緻密さ、深さという点で
前者のほうが優れているように思えました。