イメージ 1アップルの創業者の一人であり、カリスマCEO、
スティーブ・ジョブズの伝記を読みました。
邦訳も出ていますが、英語の勉強も兼ねて今回も原書で挑戦。

伝記ということで英語の難易度はそれほど高くありませんでしたが、それでもやっぱり読むスピードは日本語の2-3倍かかります。またハードカバーで日本語なら二冊分になるところを一冊にまとめてあるため厚いし、重いし・・でかさばります。
 
普段持ち歩いているバッグに入れると
容量の半分くらいをこの本が占有してしまうため、
 
いつものように仕事帰りの喫茶店でとか、
待ち時間などの隙間時間に読書することができず
読み終えるのに1カ月近くかかってしまいました。
 
何かと話題になった人ですが、この本を読むまで
スティーブ・ジョブズ本人のこと、
彼の功績について詳しく知りませんでした。
 
生まれてすぐに養子に出され、
労働者階級の家庭で育ったという生い立ちから
友人と自宅のガレージで起業。
自分が雇った部下に会社を追放され、
NeXTを作り、ジョージルーカスから
コンピューター・アニメーション部門(ピクサー)を買い取り
そこで手掛けたトイストーリーが世界的に大ヒット、
ピクサーは世界的に有名なアニメーションスタジオに。
その後アップルのCEOとして復帰、
アップルの業績を立て直しました。

iPodの投入は音楽業界の仕組みそのものを塗り替え、
iTunesは音楽業界を活性化させ、
iPhoneは携帯電話の概念そのものを変えました。
タブレット式のコンピューターとして出されたiPadや
iCloudというITの新しい概念、多くのものを生み出してきましたが、
すい臓がんに冒され、惜しまれる中で昨年10月に世を去りました。
 
常に時代の一歩先を鋭い嗅覚でかぎ取り、自身の絶対的なポリシーのもと
それらを次々と商品化していったところなど天才としかいいようのないものを感じます。
 
ビル・ゲーツが彼を「スーパーセールスマン」と評したように
人を惹きつける力やスピーチの能力が突出していた一方で、
他者への共感力が低く、極めて自己中心的な人物でもあったようです。

世界的IT企業の創業者ですが、彼は技術者というよりも
アーティスト的な要素が強い印象の人であり、
この本の中で幾度となく対比されて登場するマイクロソフトのビル・ゲーツとは
あまりにも対照的。

アップルが作り出す商品はアートとテクノロジーの交差点にあるもの、と表現されていますが
彼はデザインやアプリケーションなどについて一切の妥協を許さず、
偏執的なほどデザインの簡素さ、美しさにこだわっています。

ジョブズは若い頃から禅宗に深い関心を抱いていたそうです。
iPhoneやiPodなど徹底したミニマリズムのデザインは
京都にある禅宗寺院の枯山水の庭園からインスピレーションを得ていたということも
大変興味深いエピソードでした。

アップルの製品はシンプルではあるけれども、複雑さを無視したものではなく
複雑なものを理解した上で、余計なものを削ぎ落とし本質的なものを残したということでしょうか。
英語ではovercome complexities (複雑さを克服する)と表現されています。
 
ジョブズは次は教育改革を考えていたようです。
また彼の時代はアートとテクノロジーが交わったところにあるものが
時代をけん引してきましたが、次の時代は生物学とテクノロジーの交差点で
イノベーションが生まれると言っていました。
彼が生きていたら、もっと多くの改革を見ることができたかもしれないと
思うと大変残念です。

ところで・・・ジョブズの
人物像についてのエピソードなどを読んでいて気付いたことがあります。
権威を嫌い、型に嵌ったことが大嫌いだった、
先見性を持ち古い時代を壊し、新しい時代を切り拓いた、
優秀な頭脳を愛した一方で無能な人物は徹底的に嫌い、
そうした人たちには非情で残酷だった、
行動や身なりが奇異だった、
芸術家としては一流の審美眼を持っていた、
部下のクーデターで一度は自分が作った会社を追われた・・など
日本史に出てくる織田信長にとてもよく似ているように思います。

最初から最後まで飽きずに読めたとても面白い本でした。
どうでも良い付け足しですが、
ジョブズの天才的なアイデアによって生み出された商品を
享受する側にいる限りはとても面白いと思いますが
もしも、彼のような人が身近にいたらとても気が休まらないだろうし、
会社の上司だったらとてもとても会社に行く気になれないだろうと
思ってしまいました。
 
 
 
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