GNHという指標があります。
Gross National Happinessの略で「国民の総幸福感」という意味であり、
ブータンの前国王が提唱した国民全体の幸福度を示す尺度のことです。
金銭的、物質的豊かさを目指すのではなくて
精神的な豊かさを目指すべきという考え方から生まれたものであり、
ブータンではこれを国の政策の中心に据えているそうです。
日本を含む世界の殆どの国では国の評価(国力)をする際に
GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)をその尺度にしてきました。
この尺度でいえば日本は戦後、奇跡の復興を遂げ、
最近、中国に抜かれてしまったものの、世界でもトップクラスの
経済大国にのぼりつめました。
でも「あなたは今幸せか」という問いに対し、9割が「幸福」と答えた
ブータンはGNH指標(2008年)では世界178国中で8位、
日本は90位であったそうです。
ブータンはネパールの近く、インドと中国の間に挟まれた
とても小さな国です。農業以外に産業らしいものもありません。


兼高かおるさんがブータンについてこんなふうに仰ってました。
10年ほど前にブータンに行った時、昔の日本みたいと思われたそうです。
「川には清らかな水が流れ、護岸工事などはされておらず
川原にはゴミも落ちていない。まるで戦前の日本のようだ。
一軒の大きな家に何世代かが住み、家族団欒があり、笑顔がある。
神を祀る部屋があり、子供は礼儀正しく、外国人に対しても決して
卑屈でない心の豊かさを感じました」

こうしたものの多くは私たちの記憶にはまだ残っているかもしれませんが
現実には身の回りから消えつつあります。
日本人はこの美徳を経済発展の代償に失ってしまった、
あるいは失いつつあるのだと思います。
経済的な豊かさはもちろんとても大事なこと。
でも将来を悲観して年間3万人も自殺してしまう国に住んでいる私たち。
日本が失いかけているものを見つめてみたい。
国の姿勢をブータンから学ぶ、というふうに変えていくことが
大事なのかも・・とも思うけれど、そんな大きな話の前に
個人的にとても興味がある国です。