7巻目まで読み終えました。
全部で16巻、まだ半分にも至ってないのに
もう平氏の凋落が始まりました。

「平家を追討せよ」との以仁王の令旨を受けて
それまで東国各地に潜伏していた源氏が立ち上がります。
平家の栄華はわずかに20年。

洛内での煩わしさから清盛は福原への
遷都を実行しようとしているまさにそのときでした。
東国で不穏が動きがあるにも拘わらず、です。

頼朝なんておとなしくしているから大したことなんて
できないだろう、と見くびっていたのですね。
知らない間に一族の間に驕りがあった。

その間に頼朝と北条政子の出会いがあり、
政子の父親、北条時政をも抱き込んで
頼朝は多くの源氏につらなる者たちとその時を待ちつつ、
準備を進めていました。

京都でもいろいろ面倒なことがありました。
まず鹿ケ谷事件。
平家の縁者である人々が鹿ケ谷にある
俊寛の山荘で、平家打倒の談合をしていたことが発覚します。
これを後ろで操っていたのが後白河法王でした。

この事件は驕る平家への警鐘であったのですが
表面に現れたこの事件から世間に反平家への空気が強まっていることを
清盛は見抜けなかったのかもしれません。
その後に続く源三位頼政父子の反乱がありました。

花は散る前が最も美しく、
高倉天皇に嫁いだ自分の娘徳子が男子(後の安徳天皇)を産み、
平家一族はまさに栄華の極みにいました。

なんとなく、これまで清盛といえば悪人のイメージが強かったのですが
この小説を読んでいるとそうも思えません。
源平両側の動きが同時進行で描かれていますが、
平氏側の物語を読んでいると、平家の人びとの苦労を想い
源氏側の物語を読んでいても、源家の人びとの将来への希望に共感してしまう。

歴史の中では清盛は横柄な独裁者と思われていたような感がありますが
考えてみたら、完全な善人、完全な悪人は存在しないのではないかと。
どの立場にあっても人には心の葛藤があり、弱さ、あるいは計算高い部分、
その他、いろいろな側面があります。

歴史に名前をのこしている人であっても
それは普通の人間と変わらないのではないかと思います。
こうした各登場人物の心の動きがとても繊細に描かれていて
読み進めていくのが面白かったです。
 
しかし、後白河法皇は相当クセの強い人だったようです。
北条政子の父親時政も一筋縄ではいかない人物。
それに当時の寺院勢力がめちゃめちゃ手ごわい。
洛中には常に比叡山が濃い影を落としているような印象です。
あれだけ暴力的に政治に介入してこられると
為政者(清盛)としてはたまったものではなかったでしょう。
 
とりわけ、源頼朝は抜け目ない人物として描かれています。
表向きはおとなしそうに見せていても、内実はとても怜悧で
泣く時でも計算して涙を流すような人物です。
私はどうもこの人が嫌いなのですけれど、それでも
彼の政治的感覚、手腕はやっぱりすごいと思います。
 
父親の源義朝や弟の義経は世間から愛される存在ですが
非豪のうちに斃れる運命となった
彼らには頼朝のように思考することができなかった。
 
後年、徳川家康が江戸幕府の基盤をつくるとき
源頼朝や鎌倉幕府をお手本にしたといわれていますが
為政者というのは彼のごとくあるべきなのでしょう。
実際のところ、政治家って嫌われてなんぼのもの?かもしれませんね。
 
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