
すごく久しぶりに司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を再読しています。
この小説は私が初めて読んだ司馬作品であり、初めての長編歴史小説です。
司馬さんの活き活きとした人物描写に引き込まれ、当時は学生時代で暇だったこともあり、
あっと言う間に読んでしまったものです。とても面白かった!という感想でした。
今、4巻目を読み終わり5巻目に入りましたが、部分、部分では覚えていても
すっかり忘れてしまっていた話の展開、登場人物、エピソードなどがたくさんあって
改めて新鮮な気持ちで読んでいます。
この小説を読んでから私は京都に4年間住み、今でも
時折京都に出かけて幕末の歴史の舞台になった場所を訪れています。
またこの数年間にも休みのたびに四国へ旅行し、高知県を訪れたこと7-8回。
竜馬が育った街を歩き、彼にゆかりある人々の生まれた土地、活躍した場所など、
いろいろと見てきました。
学生時代は本を読んで、私なりに浅いものではありますが
日本史についての知識も多少は蓄えました。
今、この小説を読んでいると、例えば竜馬が生れ育った高知城下の本町筋、
京都河原町にある土佐藩邸、長州藩邸と出てきたりしても
頭の中で覚えている地図上で、すぐにピンポイントで、あそこ!とわかります。
歴史の経緯も他の本で読んだり、ドラマで観たりしているので
一回目よりも二回目の今回のほうが情景が浮かびやすいです。
幕末の大混乱期の日本がたどった展開ももう一度整理しなおす機会になっています。
それに司馬さんの人物の描写がすごく面白い。
人物たちの間で本当にこんな会話がされていたのではないかと
信じてしまいそうになります。(土佐弁、薩摩弁が面白い~)
竜馬も魅力的ですが、気になる人物がたくさん出てきました。
私個人の意見ですがここまでのところで私が一番好き!と
思った人物が武市半平太(瑞山)です。
土佐勤王党の首領であり、郷士層を集めて攘夷論を主張し、
一時は土佐の藩政を動かすほどまでになりましたが、
時勢の変転で、藩から切腹を命じられ果ててしまいます。
竜馬にいわせると瑞山は時勢を読み間違え、またその思考は
土佐24万石という狭いエリアから出られなかったわけです。
でも私はこの人の実直で誠実な人間の部分がとても好きでした。
あと興味を引くのが陸奥宗光です。
この人は元紀州藩士、本名は伊達です。
陸奥という苗字に後年改名したのは先祖の出身地からとったのですね。
この人は維新後、外交官として目覚ましい活躍をしていますね。
日墨通商修好条約への調印、伊藤内閣においては外相として
台東条約の締結に尽力しています。
日清戦争ではイギリス、ロシアの中立化に成功し、
下関講和会議には全権委員となり活躍しています。
その高度な外交政策は日本外交の原点と言われています。
今の日本にこんな人がいたら、世界の舞台での
日本の立場ももっと違うものになっていたのではないか?と思ったりします。
どこかで戦争があった時の日本の役割はお財布担当、
というような非難や侮蔑を受けることもなかったのではないかとか。
いや、太平洋戦争の頃にこの人がいたら
世界外交の舞台で海外の要人ともっとうまく折衝して
あの悲惨な戦争だって回避できたのではないかとか。
その彼が若かった日、神戸に海軍塾を造った竜馬のあとを腰巾着のように
ついて周り行動を共にします。
もともと外交官として素晴らしい素質もあったのだろうけれど、
竜馬からの感化もかなりあったのではないかと思います。
京都での活動時、宿舎にしていた材木商の家を維新後訪れた時、
往年を思い出して涙したそうです。
それからもうひとりが三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎です。
4巻までのところではまだちょっとしか登場してきませんが、
気になる人物です。
やっぱり大きなことを為す人はどこか普通の人には手に負えない
というか、一般の器には収まりきらないものを感じます。
この人の生家は高知市から東に20キロくらい行った安芸というところに
保存されており、今も三菱グループに大事に管理されているようです。
私もここを訪れたことがありますが、庭石を日本の地図に見立てて
おいてあったのが印象的でした。
若かった頃から弥太郎は将来、広い世界に大きく飛躍する日を夢見ていたのでしょうね。
月に1-2回、NHKの大河ドラマを見ていますが、弥太郎を演じている
香川照之さんが妙にハマっていて、小説に弥太郎が登場する部分では
どうしても香川さんの顔が浮かんでしまいます(笑)
8巻のうち4巻まで来て竜馬はいま29歳です。
ようやく勝海舟の知遇を得て世に出始めた頃です。
彼は33歳で刺客の手によって暗殺されていますから
この人が歴史の舞台で活躍したのはわずか4年間。
多くの偉業を成した人物であっただけに
たった4年間という期間が短く意外でしたが、
普通のひとの何倍にも相当する密度の高い4年間だったのでしょう。
というわけで備忘録のつもりでメモでした。