親しい人が、以前、地唄舞を習っていました。
地唄舞というのは、もともとはお能から派生した舞だそうで、
畳一枚の上で舞うことができるといわれる静的な踊りです。
地唄舞というのは、もともとはお能から派生した舞だそうで、
畳一枚の上で舞うことができるといわれる静的な踊りです。
お能よりはもうちょっと動きがあるけれど、動きはとても繊細。
その微妙な動きから心の内面を浮かび上がらせる独自の踊りです。
その微妙な動きから心の内面を浮かび上がらせる独自の踊りです。
数年前、東京で行われたその方の発表会を観に行ったことがありました。
素人の目で観ていると、ひとつひとつの動きが本当にゆっくり。
舞手の人の手は動きが抑えられていて、ちょっとしか動かないの。
この辺のたしなみがない私としては、見続けているのがしんどかった~、正直なところ。
素人の目で観ていると、ひとつひとつの動きが本当にゆっくり。
舞手の人の手は動きが抑えられていて、ちょっとしか動かないの。
この辺のたしなみがない私としては、見続けているのがしんどかった~、正直なところ。
発表会後、お家元の先生とお弟子さん達との打ち上げ?に私も参加させてもらいました。
その場に東京で国文学か史学だったかを教えておられる大学の教授が同席されていて
日本の伝統的な舞について、この「ちょっとしか動かない舞の良さ」について
いろいろお話を伺うことができました。
その場に東京で国文学か史学だったかを教えておられる大学の教授が同席されていて
日本の伝統的な舞について、この「ちょっとしか動かない舞の良さ」について
いろいろお話を伺うことができました。
その先生のお話がとても興味深かったので、今日は暇にまかせて思いだしながら書いてみます。
太平洋戦争の頃、その先生のお知り合いが出征されていて、部下を戦死で失われたそうです。
その方は上官として、部下のご両親のところにもう一人の人と、息子さんの戦死を
伝えに行ったそうです。すごく重い役目ですね。
その方は上官として、部下のご両親のところにもう一人の人と、息子さんの戦死を
伝えに行ったそうです。すごく重い役目ですね。
息子さんの立派な戦いぶりを誉めたたえつつも、
子供を持つ親の立場を考えたら、さぞ痛恨の極みだろうと、
なんとも重苦しい想いでそのことを伝えたそうです。
子供を持つ親の立場を考えたら、さぞ痛恨の極みだろうと、
なんとも重苦しい想いでそのことを伝えたそうです。
ところが背筋をぴんと伸ばしてその上官に向かって座っておられた
彼のお母様は息子さんの悲報を聞かされても、表情ひとつ変えず、
うろたえる素振りも全くなかったそうです。
そして静かな口調でこう言われたそうです。
「息子がお国のために尽くせて、本当に光栄なことです。」
また、わざわざ知らせるために我が家にきてくれたことに対して
お礼も言われたそうです。
彼のお母様は息子さんの悲報を聞かされても、表情ひとつ変えず、
うろたえる素振りも全くなかったそうです。
そして静かな口調でこう言われたそうです。
「息子がお国のために尽くせて、本当に光栄なことです。」
また、わざわざ知らせるために我が家にきてくれたことに対して
お礼も言われたそうです。
あまりにもの冷静な反応に、上官だった方は、なんとまあ気丈なご母堂よ、と驚かれたそうです。
一人息子さんだったらしいのに。
でもね、その数秒後、ちらっと目が、両膝におかれたお母様の手に移ったそうです。
その時、どきっとしたって。
一人息子さんだったらしいのに。
でもね、その数秒後、ちらっと目が、両膝におかれたお母様の手に移ったそうです。
その時、どきっとしたって。
全く穏やかな表情とは反対に彼女の手は、血が滲み出んばかりに強く握りしめられ、
血管が浮き上がり、わなわなと震えていたそうです。
それでもその表情には全く取り乱す様相もなく、静かなままで、
彼女の口からはお礼の言葉しか出てこなかったって。
血管が浮き上がり、わなわなと震えていたそうです。
それでもその表情には全く取り乱す様相もなく、静かなままで、
彼女の口からはお礼の言葉しか出てこなかったって。
それを見た上官は、目の前で大声で泣きわめかれたであろう場合よりも
遥かにもっと強く胸に突き刺さる悲しみを感じたそうです。
最愛の一人息子を失い、胸も張り裂けんばかりの母親の慟哭が、
その手のわずかな動きから伝わってきたから。
家を辞したあと、そのお母様の心の裡を想って家の外で思わず、男泣きしてしまったそうです。
遥かにもっと強く胸に突き刺さる悲しみを感じたそうです。
最愛の一人息子を失い、胸も張り裂けんばかりの母親の慟哭が、
その手のわずかな動きから伝わってきたから。
家を辞したあと、そのお母様の心の裡を想って家の外で思わず、男泣きしてしまったそうです。
必死で抑えて抑えて、それでも抑えきれずに表面に滲み出てしまう微妙な言葉、動作に
人の心はより強く揺さぶられるのでしょうか・・と、そんな話をして下さいました。
人の心はより強く揺さぶられるのでしょうか・・と、そんな話をして下さいました。
人の心の内側は意外と手の動きなど見逃してしまいそうな末端に出るものだそうです。
何かを扱う時に丁寧に持つ人、荒っぽく扱う人。
いくら外見を美しく装っていても、こういう些細なところに
その人の本当の心の持ち方が見えてしまうって。
何かを扱う時に丁寧に持つ人、荒っぽく扱う人。
いくら外見を美しく装っていても、こういう些細なところに
その人の本当の心の持ち方が見えてしまうって。
大学の先生は、その話を聞いて以来、女性を見るときは、顔のつくりや服装よりも、
彼女の手の表情を観察してしまうようになりましたよ、
と冗談っぽく締めておられました。
聞いていた私は、なるほど・・と思ったものです。
彼女の手の表情を観察してしまうようになりましたよ、
と冗談っぽく締めておられました。
聞いていた私は、なるほど・・と思ったものです。
心の修行はまだまだ長い道のりです!