イメージ 1

この本を読みました。
著者は徳川宗家第18代当主の方。

江戸時代とは何だったのかということを
とてもわかりやすく解説してある本です。
これまでネガティブにみていた江戸時代のイメージをかなり良い方向に
引っ張ってくれた感じ。

魅力的な人物が次々と登場し、変革のエネルギーに満ち満ちた
戦国時代や幕末に比べて、
江戸時代はどこか生気の抜けたイメージがありました。
これは中学、高校の日本史授業のせいかも。

私が持っていた思いこみ・・・
農民は「生かさず殺さず」の生活を送り、
各地のお殿様は隔年の参勤交代を義務付けられて貧乏するし、
人々は士農工商という身分制度に縛られて、国全体も鎖国されて、
なんとなく江戸時代は戦はない泰平の世だけれども
「抑圧された」「息苦しい」時代というイメージもあったことは確か。
でもそういうネガティブな思いこみが大きく変わりました。

江戸時代は教育水準も高く、
人々は武士から庶民にいたるまで高い倫理観を持ち、
豊かな文化が育まれた時代であり、
この時代に培われた精神が現代の日本人の中に強く根付いているということ
なるほど、と思うことがいっぱい書いてあります。

当時の日本を取り巻く世界の情勢についても書かれていて、
あの頃はこんなことがあったのか~と、いろんなことがリンクしてきて
面白かったです。欧米列強が世界各地で強奪競争をしているような時代、
鎖国していた日本は荒れ狂う嵐の中でぬくぬくしていた温室みたいです。

日本人は平和ボケしているってよく批判されるし、
私もそう思っていたけれど「平和が当たり前」と思えるくらい
平和な国に暮らしてこれたことはすごく幸せなことだと思いました。

それから著者は長く日本郵船のニューヨーク支店に勤務されていました。
企業人としての視点から見た日本史というのも面白かったです。
秀吉の朝鮮出兵なんか特に。あの朝鮮出兵ってそもそも無茶なものだったでしょう。
現地で苦しい戦を続ける加藤、黒田、立花といった武断派諸将と
督戦に努める石田三成のような秀吉直属の若手官僚の間になぜ確執が生まれたか。

もともと無茶だった朝鮮出兵は進むも破滅、退くも破滅というほどの悲惨な
ものでしたが本国にいる秀吉や文官の三成には戦の悲惨さがわからなかったのですね。

これを現代の海外に展開している日本企業内でも日本国内にある本部と
現地にいる海外部隊との間で起こりがちな対立の構図に例えてあったりして。

でも一番印象に残ったのは江戸時代の庶民の倫理観とか品格の高さとか。
人のものは盗んじゃだめ、というのは当然のことだったし、
子供は社会の宝物みたいな感じで、先生や親だけじゃなくて
社会全体が温かく、でも、厳しさも持って
子供たちを育てていく社会だったと書いてあるのです。

当時日本に来ていた外国人が馬車で市中を行くと先駆けする別当さんが
「道路の中央に安心しきって座っている太った赤ちゃんを抱き上げながら
わきへ移したり、耳の遠い老婆を途のかたわらへ丁寧に導いたり、実際、
10ヤードごとに人命をひとつずつ救いながら進む」という状況だったと書いてるそうです。
こんな記録から浮かび上がるのは、平和な環境の中で
のびのーびと暮らす人たちの姿です。

それから当時から江戸の町は清潔でとてもきれいで安全だったということとか。
同時代のイギリスやフランスの庶民の生活の話が出てくるのだけれど
あちらの国ではまだ下水道とか整ってなくて、窓からバケツをひっくり返して
汚物を捨ててたので街はものすごーく臭くて汚かったらしいです。
ベルサイユ宮殿にトイレがなかったというのは有名な話ですよね。

川柳コンテストなんかがあったら、江戸の庶民が一斉に川柳を書いて
応募が殺到状態になっていた頃(日本人は当時から識字率がとても高くて庶民にいたるまで
教育があったということ)、イギリスやフランスの農民は貧乏で
貴族の人たちから「オス」「メス」という動物呼ばわりされてて
冬でも暖房をとるお金がないから家畜小屋で動物と一緒に寝るような
生活を送っていたとか、その一方で貴族はキラキラの宮殿に住んですごい
フルコース食べていたとか。

日本の江戸時代をもろ手を挙げて誉めている内容ですけれど
当時の日本人の「品格」を思うと誇らしくなる感じです。

今日はもう遅いし文章を推敲している時間がないから
このまま投稿してしまいます。変な文脈許して。