この夏は余り映画を観ることができませんでした。
7月はゼロ。8月は二本見ました。

レスラー

過去の栄光を失い、老いと孤独の現在を生きる中年レスラーの話でした。
悲壮感漂う場面がたくさんあるのだけれど、とても深い感動を得た素晴らしい作品でした。

最初、本当に驚いたのがこの映画の主人公をミッキー・ロークが演じているのです。
私が記憶しているミッキー・ロークと現在のミッキー・ロークの姿があまりにも違っていたからです。
80年代に大活躍した美形の俳優でしたが、ここ20年くらい全くその名前も聞いていませんでした。
ミッキーロークは90年代以降、人気が低迷して、
実際にプロボクサーに転向した時期があったのだそうです。
格闘技の世界に疎い私はそのことも全然知りませんでした。
結局、プロボクサーとしては大成せず映画界に戻ろうとするのですが
ボクシングのパンチであの男前だった顔は崩れ、その後整形したり、離婚したり、
仕事も振るわずで本人の人生もズタボロだったんですね。

この作品は当初、ニコラス・ケイジがやる予定だったのですが、
アロノフスキー監督がミッキー・ロークの起用を主張したとか。その選択が大成功だったのですね。
2008年の映画祭で22もの主演男優賞を獲得したそうです。

映画を観ながら、孤独の中で戦い続ける主人公と、
ミッキー・ロークの人生それ自体が重なるようでした。
心臓の病を抱えて医師からレスリングを続けたら命の保証はないと言われ、
一度は引退するも、主人公はやはりそれでもリングに戻るのです。
死ぬとわかっていて、それでもなぜそこに戻ろうとするのか、本当に胸が詰まるようでした。

いろんな場面で人生のもつ重みみたいなのがじわじわと伝わってくる
すごくいい映画でした。観終わってからも余韻がずっと残りました。
ただ肝心のレスリングの流血シーンとかは恐ろしくて見ていられませんでした。


四川のうた

淡々とした流れながら、こちらもとてもいい作品でした。
50年間にわたり中国の基幹工場として栄えた巨大国営工場で働いてきた
様々な年代の労働者たちがその日々を振り返って話すという構成でした。
日本でも団塊の世代と今の20代の人たちの感覚が全く違うように
中国も世代によって人の価値観は大きく変化しているのですね。
労働者たちの姿を通して中国の時代の流れを観ているような気がしました。

この映画の舞台は四川省の成都なのですが、
ちょうど震災直前に撮影したものだそうです。
たくさんの労働者のインタビューがありますが、
4人の俳優さんたち以外は、すべて実際にその工場で働いてきた
人々が出演しているそうです。

私は子供と生き別れになってしまった初老の女性の話が一番印象に残りました。
家族で船に乗って移動していた時、船がどこかで数時間停泊するのですが
その時、子供がどこかに行ってしまうのです。
出港の時刻が近づいても見つからない子供を必死で探す母親。
普通なら自分の子を探すために陸に残ると思うのに
当時の中国でそれさえ許されなかったということ。
余りにも辛い話でした。