長く続いた戦乱の世に終止符を打って260年も続いた太平の世を打ち立てた
徳川家康に興味を持って、最近、山岡壮八の「徳川家康」を読み始めました。
全部で26巻という大長編で、ようやく一巻目の終りにきました。
まだまだ・・というところです。

日本史を扱った小説では私は司馬遼太郎の作品でその多くを読んでいるので(多分100冊以上)、
どうしても自分の日本史に対する視点が司馬史観にかなり影響されているように感じていました。

戦国時代を描いた司馬遼太郎作品では、どれでも、家康は腹に一物あるような
「たぬきおやじ」のイメージで、あまり好感のもてる人物に描かれてません。
司馬さんは多分、家康のことをあまり好きじゃなかったんだろうなーと思います。
同時代の人物ではどちらかというと、石田三成や明智光秀にかなり肩入れしている感がありますし。

でも本当にただの「たぬきおやじ」程度だった人が
戦国武将としては人気の高い織田信長や豊臣秀吉でさえ叶えられなかった
日本の統一を成し遂げることができたのだろうか、と思いました。

権謀術数渦巻く乱世を生き抜き、当時のキラ星のごとく居並ぶ強豪たちの上に立ち、
江戸幕府という盤石な政治体制を作り上げたこの人には、
実は大将となるべく深い人間性とか器の大きさ、
また他の戦国武将たちが及ばなかったような政治力、秀でた先見性があったのではないかと。
決して、運の強さとか、忍、忍・・だけで上りつめたのではないですよね。
ということで、今回はアンチ家康ではなくて、家康サイドから書いてある本を読んでみることにしました。

一巻目の家康はまだ幼名の竹千代と呼ばれています。父親である岡崎の松平広忠のところへ、刈谷の水野家から御嫁にきた於大の方の縁組の下りです。家康は忍従の人と言われていますが、もう生まれる前から双方のお家は一族をあげてそれを強いられる大変な環境にあったのですね。
父の松平家も、母の水野家も、東は駿河の今川家、西は尾張の織田家という大国に挟まれた弱小国。
お家存続のために小国同士が縁組したのがはじまりです。

吉法師と呼ばれていた少年時代の織田信長も登場します。頭が切れすぎる吉法師に南朝方の祭祀を任されていた竹之内波太郎が「もっと愚か者のふりをしろ」とたしなめる場面があります。大の大人を相手に躊躇することなく鋭く切り返す吉法師、のちの信長の面影が既にそこにあります。
また後世、あれは実は明智光秀だったのでは?といわれた怪僧天海も、「随風」という変わり者の若い僧侶として登場しています。

そして世に翻弄される女性たち。司馬さんの小説はとても面白いのですが、あまり女性が出てこず、男性中心の乾いた話が多いです。でもこちらの本では男性たちの陰で大きな役割を果たした女性たちの感情、嫉妬、苦しみについても結構ページが割かれています。
そして両家に仕える優秀で忠実な家臣団。ひたすら主君を想う骨太な三河武士の姿が浮かびます。

他の本も並行して読んでいるので、なかなか進みませんが、年内の読了をめざして地道に読んでみようと思います。せっかくお隣の県に住んでいるのだから、ある程度まで読んだら、愛知県にある家康ゆかりの地を自分の足で歩いてみたいですね。^^