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2006年 ドイツ、フランス、スペイン合作
監督: トム・ティクヴァ
出演: ベン・ウィショー 、ダスティン・ホフマン 、アラン・リックマン etc

結構、「きわどい」映画でした。
猟奇的な連続殺人犯の話として観ると、不気味で、
理解不能な展開、わけがわからない・・という感想で終わってしまいそうですが、
もし、誰もが体験したことがあるであろう孤独感、疎外感という視点で
観ると、言いようのない感動を覚える映画かもしれません。
感想は人それぞれだと思うし、特にこの映画は評価が二分する作品のような気がするので
断言するのにはちょっとためらいを感じます。

18世紀の不衛生極まるパリの街、ここで産み落とされ、
捨てられ、売られ、誰からも愛されることなく成長した
ジャン=バプティスト・グルヌイユ。
彼は天才的な嗅覚を持ち、この世に一つしかない最高の香りを
創り出すために次々と殺人を重ねていきます。

途中で気分が悪くなるようなグロテスクな場面がいっぱい出てくるので
「ほんとにこれは趣味の悪い映画だなー」、
「今週は観る作品を間違えたなー」とか思いながら観てました。
でも、最後は思ってもみなかったどんでん返しというか
衝撃的な展開が待っていました。

彼は最後の最後、とうとう世界を自在に操れる究極の香水を創ることに成功します。
でもそこで彼が取った行動を観た時に「はっ!」としました。
2時間を超える長いストーリーの最後になって
ようやく私は主人公が本当に求めていたものが何だったのか、
それが突然わかった気がしたのです。

彼は、自分が産み落とされて捨てられた
汚物にまみれ臭気漂う魚市場に戻っていったのです。
権力や富よりも、彼が生涯求めて止まなかったのは
「誰かから愛されたい」という思い、
それだけだったのではなかろうか、と。

で、その後の衝撃的なラストシーン。
もう、うそー、っていう感じで終わる。

ありえない話で、完璧に理解できたかどうか
わからないけれど稀なくらい凄い映画のような気がします。

ただ、この映画は是非、フランス語で撮影してほしかった・・・。
フランス語は理解できないけれど
あの蟲惑的で妖しげなストーリーは発音が明瞭な英語よりも
ひとつヴェールをまとったようなフランス語でやってもらったほうが
雰囲気が一層増したのではないかと思います。

あとで知ったのですが、音楽はなんとベルリン・フィルが担当してた。
でも映画を観ていた時は凄すぎるストーリーにあっけにとられていたので
音楽は一切記憶に残っていません。
え、BGMなんかあったっけ?っていうような。
先週の「ドリームガールズ」と正反対ね。