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(21分45秒〜)
吉田:ぼくんとこ(大学院)は基本的に論文書かなきゃいけないから。
住友:うんうん。
吉田:結局、百枚とか書かなきゃいけないんだけど……。
住友:うんうん。そうやね、論文。
吉田:まあ、結局二百枚とか書いたんだけど。
住友:すごいね、二百枚も書けるって。
吉田:いや、そんなのすごくないんだよ全然。千枚書く奴がいるんだよ!
住友:はあ、変わった人もいるね。千枚なんて。
吉田:困ったもんで、一年留年して千枚書いてんだよ。
住友:はいはい。
吉田:じゃあ留年する前の一年間、何してたかというと……、実は一文字も書いてないんだよ論文。
住友:あ、そうなんね。じゃあ、何をしとったんけ?
吉田:何をしとったんかと言ったら……。その、印刷室ってあるんだよ。大学院生だけが使える、ほぼ上限なしでいくらでも印刷できるやつなんだけど。
住友:はいはい。
吉田:そこに一日中入り浸ってて、延々と資料をコピーしてんだよ。
住友:すごいね!
吉田:朝から晩までコピーしてんだよ。で、それを段ボールにどんどん入れていって、部屋中段ボールだらけになって……。
住友:ふむふむ。
吉田:で、その段ボールを横目に「書かなきゃいけないな」と思いつつ、どんどん部屋が狭くなっていくこの現状を憂う、みたいな。
住友:ほおー。なかなかすごい方ですね(笑)。
吉田:で、どんどん心が病んでくんだよ。
住友:病んでくやろうね。そんなことすると。
吉田:そう。だから夜中によくわからない長文のメールが送られてくる、みたいな人になってしまって……。
住友:はいはい。
吉田:このまま潰れてくのかと思ったら……、要するに、一年留年して千枚書いて、ちゃんと出てったんですよ!
住友:ほぉー。すごいじゃん、出てけるっていうのは。
吉田:だから、なんでそこで立ち上がれたかっていうと……。
住友:はいはい。
吉田:その人、現代詩をやってる人なんですよ。
住友:文学の現代詩?
吉田:そう、現代詩。で、現代詩やってる人って少ないから、なんかスカイプかなんかで、全国の詩を好きな人を集って……結局三人くらいしか集まらなかったんだけど……、その人たちと詩の論評をするみたいなことを定期的にやってたみたいなんですよ。
住友:はいはい。
吉田:で、ある日、詩の論評をしてたら、そのメンバーの一人がマジで発狂したらしいんだよ。
住友:マジで発狂したの!
吉田:マジで発狂したんだって……。で、もう、精神病院行かなきゃいけないみたいな感じになって……。今は生きてるのかどうか分からないんだけど。
住友:うんうん。
吉田:それを見て、要するに未来の自分をそこに投影したらしいんですよ。
住友:なるほど。
吉田:「こうなっちゃやばい!」ってなったらしくて。その日から印刷室に入り浸るのはやめてただ論文を書くことだけに邁進していく、っていう生活をし出したんですけど……。
住友:うんうん。
吉田:ただ、書いてたらそれはそれで頭おかしくなってくんですよ。つまり、文字を書くってのは、文章を書くってのは基本的に過去形なんですよ。でも現実世界って、進んでいくじゃないですか、時が。
住友:進んでくね。
吉田:だから進んでいくその時の流れっていう、要するに腕を動かすっていうのは進む行為じゃないですか。ペンを握って先に進むっていう行為と、過去形で文字を書いていく行為で、脳はその違いを上手く処理できないらしくて、結構頭おかしくなるらしいんですよ。
住友:うんうん。
吉田:で、彼はまた途中、頭おかしくなってきたんですよ。
住友:うんうん。
吉田:でも最終的にまたカムバックしたんですよ!
住友:すごいね。メンタルが。
吉田:なんで最終的にカムバックできたかは、二回目は教えてくれなかったんですよ。
住友:ほぉー。
吉田:ただ、「カムバックした」と言っている彼は、白髪だらけになってるんですよ! だからものすごい一夜があったわけだよ!
住友:ものすごい話だね、ほんと……。
吉田:悪魔との戦いがあったんだよ、おそらく(笑)。
住友:……やね。
吉田:で、現実世界に戻って来たんですよ(笑)。
住友:うんうん。
吉田:その人、早稲田だったんだよ、学部時代。
住友:早稲田! すごいじゃん。
吉田:早稲田だったんだけど、高校は行ってないんだよ。
住友:ああ、いいんじゃない、高校行ってなくても。
吉田:高校中退してて、トライかなんかで、高校資格取るみたいなところからカムバックしてきたんだよ。……だから、何回潰れてもカムバックするんだよ、その人は!
住友:いやあ、会ってみたいね。
吉田:ズタボロになりながら! ほんとに、フケまみれとか白髪まみれになりながら!
住友:うんうん。
吉田:何度も現実にカムバックする男なんですよ。……だから、周期的に考えて今頃また潰れてるんだけど。
住友:ほぉー。