- 前ページ
- 次ページ
頭がだるい。
今ある感情はそれだけだ。
少年は、自転車置き場手前でため息を漏らす。そう今日はもう散々だった。
朝は教頭先生に「お前おうちゃっかな。」と言われ、目からビームが出そうな形相で見られるし、教室に入ろうとしたら前の人がドアを閉めて腕が挟まる。
英語の時間になると、なんかもう話に追いつけない。最近になって急ピッチになって、英文が最近暗号にも見えてきた。
しかも、うとうとしている所にドンピシャで英語の訳を読めと言われるのだ。もう地獄だ。
ちなみにこのことは尊田に言うのはナッシングの方向で。
もうこれ以上悩みのタネをふやしたくはない。
ここまで耐えた俺に誰か褒美くれよ。と心の中でつぶやくが答えるのはカラスの鳴き声だけ。
早く帰ろう…
いつものゴツイジャンパーのフードをかぶり自転車の鍵を開ける。
はたから見たら北極に居そうな人に見えるのだが、本人は気にしていない。何せファッションや音楽や俳優などの流行に一番疎い人物なのだ。私服を着る時は妹からはダサい、の一点張り。
主にこの少年が好きな服の着かたは、ボタン全開でもう見るかにだらだらな奴だ。他の人から見てもダメ人間と見られてもおかしくない。
一度はヤンキーな格好で学校中をうろついて回りたいと思う、まだまだ思春期が抜けていない年頃だった。
(今日の予定は特になしと。早くこたつの中でころがりてェな。いやそれよりも暖房をつける方が先か?それともゲームか…)
どちらにせよ、宿題とか勉強とかが頭に入らないのはいつものことだ。受験生なんだからしっかり勉強しなさいよ。と母親の顔が出てくるが、黒マーカ―でよく塗りつぶしておく。
実際に勉強なんて家では全くしていない。もうパソコンやテレビばっかりの生活だった気がする。
ちなみに趣味はこたつの中を一人占めする事だ。当然テーブルの上に置いてあるみかんも支配下にある。
そんな事を考えていたら夕日が見えた。この時間帯には早いなと思いながらも赤く染まった空を憂鬱に眺める。今日の出来事はハッキリいって良いとは言えなかった。
だがそんな中学校生活もあと一か月だ。あともう少しでみんなが、それぞれ違った道を歩んでいく。
小さな選択の一つ一つを選んで決めたこの人生。これからも自分でそれぞれの道を、選択をしていくだろう。例え、それが破滅の道だとしても絶対に後悔はしたくない。
そんな事を考えながら改めて夕日を眺める。
夕日はさらに濃くなり真紅となっていく。そして燃え尽きたように少しずつ色が落ちていく。
そんな夕日を追いかけながら、少年は自分の家へと帰っていく。
(…なぁーんで、こうなってんの?)
少年は自分の部屋に入って呟いた。今、自分の目の前にはプリントで埋もれた自分の机と教科書が散らばっている床があった。
中学生男子は自分の部屋の整理ができないなんて世の中から思われているらしいが、実にその通りだと自分で思う。
今思えば、家から帰ってきたらジャンパーを脱いで、プリントを出す行為しかしていない。
そんな事をやっていたら部屋が倉庫になるのは目に見えている。というか現になっている。
地道に整理するしかない今、何でこんなになるまで手を付けていなかったんだという後悔が残る。
こんな時に家庭的な女の子がいればなぁ。と現実逃避してみるが目の前の状況が変わらないので手だけソクサクと動かす。
と、そんな時に懐かしい物が発掘された。なんともまぁ、ベターだ。
(アルバムねぇ…)
そこにあったのは埃だらけになった小学校の時のアルバム。開いてみると自分の9年前の姿がそこにあった。皆からは、お前昔から変わってねぇーな。なんて言われているが成長はしているはずだ。
ページを進める毎に情景が鮮明になっていく。アルバムは数ページしかないが、自分の少ない思い出を、今まで保存していたのかと思うと、なんとも複雑な気持ちになる。
小学校時代の自分はスキャンダルだらけだったなぁー、とか思い出していたところに…
「なーにサボってんの? さっさと手を動かす!」
頭に重い衝撃が来た。殴った物はおそらく本か何かだろう。
バッシーンという景気の良い音を後頭部から出して、その少年は倒れた。本程度そこまでの重量は無いが、それを人の頭に叩きつけられた場合は違う。速度を得た本は、それこそ鈍器並みの破壊力を持つのだ。というか本て叩きつけるものだったけ?
「あ、頭がー…」
「掃除したら昼食なんだから早く終わらせなさい」
「あ~あ。またなんかお兄ちゃんやったの? 懲りないねー」
「うるせッ。考え事してたのに… もうチクショー!」
アルバムを乱暴に閉じ、掃除を再開してプリントを整理するが、なんかもうすぐに終わるような量じゃない。
一か月もほったらかしにしていた部屋を今日中に綺麗にするというのは骨が折れる。
朝から叩き起こされて掃除をしているというのに、まだ終わらない程だ。
そしてまた、懲りずにアルバムを開いて見ていると、また背後から景気の良い音が、家の中で響いた。
ドガッ!ガツッ ‼‼
愉快な寝起きだと思う。ちなみに今のは目覚まし時計が自分の顔面に落ちた音だ。
んな事ある訳無いだろ。と思うかもしれないが、現に今赤く腫れ上がっている。
普通目覚ましというのは音を聞いて起床するものだが、今自分は激痛で目を覚ましている。
はっきり言って、休日の12時に目を覚ます野郎が7時に起きろというのがダメなのだ。
実際、いつも朝は意識朦朧としているし、ちゃんと寝た気がしない…。
明日こそは起床したら、すぐに覚醒しようなんて考えていたらこれだ。
もうどこにも睡魔なんて無い。そうあるのは激痛と目からこぼれでた涙しかない。
しかも落ちてきたのは重量2キロはあるんじゃね?というような特大の目覚まし時計だ。
確かにこれなら誰でも睡魔は吹っ飛ぶだろう。
だがそんな事をしていたら、こちらの身が持たないのは目に見えている。
布団から起き上がったのはいいが、ふらついて足の小指をたんすの角で打ちつける始末。
冬の寒い時期に小指を強打するのは肉体的にも持たない。
(…プッ!)
今のは家族の失笑だ。赤く腫れあがった額を見るや否や顔をそむけて肩を揺らしている。
…今度覚えておけよ。
と考えるが足の小指を抑えながら、額が赤く腫れた人物を見て失笑しない人間が少ないのではないか?と冷静に考える。今のところ家族全員の肩が揺れている。
こんな状況で、目覚まし時計が顔面に落ちて、涙を流して起床したなんて言えない。言ったら指をさされて大笑いされるのがオチだ
こういう時は無言に限る。
今日はいつもより早く朝食を食べた。
なぜなら食べている間も家族からチラッチラッと視線をこちらに向けているからだ。
正確には赤く腫れあがった額をだ。
母は自分の事を少しは心配していたようだが笑いを堪え切れてない。
「どうしたの?何かあった?」と言っていたがその中に、あんた朝から何しでかしてんの…という言葉が聞こえるのは気のせいではないだろう。
「さぁー学校の準備準備―」
失敗。棒読みになってしまった。まあいい。とにかくここから離れよう。
力でドアを開けて、思いっきり閉める。そして前進しようとしたが、体が前に進まない。
何故かって?そりゃあ指がドアに挟まってるからでしょ…。
…え?
その後、悲鳴が聞こえるのは後の話。
前回の続き…
いつも昼頃に起きるとある少年。起きて朝食(誰がどう見たって昼食)を食べるはずが、そこには魚肉ソーセージを剥いた皮のみ。
頼みの綱の冷蔵庫も食料が入っていない。どうする…?
(…食い物はもう諦めよう。ふぁあ。)
午後になってもこの少年はまだ目を覚ます事はない。まだ頭が覚醒していないこの状況ではいくら状況を打開できる案があろうとも思いつかず、行動する脳も無いのだ。
少年はまるでバイオハザードにでてくるゾンビのように腕を垂らしている
《8畳部屋》
今日は土曜日、見たい番組などとうの昔に終わっている時間帯だ。
だが録画という便利機能を忘れるほど意識は無くしていない。
そう前日の金曜日はポチたまが放送されているのだ。
実はこの少年、動物好きという面を持っている。
しかし金曜日は塾がある為見る事は出来ない。その為、ポチたまは土曜日に見るという習慣が身についているのだ。
いつもの通り、テレビ電源をつけ、HDD(ビデオの進化版的なヤツ)をつけ、メニュー画面にあるポチたまを再生して…
しかし、そこにはポチたまという題名の項目は無かった。代わりに『しゅごキャラ!』という項目があった。
それで今まであった眠気はどこかに吹っ飛んだ
確かに、今自分は動物好きという面を持っているとは言ったが、なにも主人公が少女のアニメが好きな、ロリコンだとは言っていない。
世間でロリコンなヤツがいるらしいが俺は断じて違う。俺はそこまで進行していない。
後で知った事だが、どうやらその機械(HDD)は録画できる量がギリギリになると、自動で動画を削除するらしい。設定が元々変だったらしくポチたまは抹消された。
こうなると少年の行き場所はもう無い。
朝は寝過ごし、昼は飯なし、チョコは目の前にあるがお預け状態、録画された動画も
消され残ったのは少女アニメ。
少年はまたもや手を床に付け崩れ落ちるのだった。