本ブログでは、時間外労働手当に関する裁判例を紹介しています(つづき)。
二 当審で以下の主張を付加した外,当事者双方の主張は原判決の事実第二記載のとおりであるので,これを引用する。
1 第一審原告らの主張
(一)タイムカードのない部分の時間外労働(残業)について
(1)第一審原告斉藤,同萩原政彦,同久保田,同小黒は,いずれも時間外労働(残業)に従事し,タイムカードを正確に打刻していた。ところが,タイムカードの一部が第一審被告から提出されていない。第一審原告らは,常態として時間外労働(残業)を強いられていたのであり,このことはタイムカードのない月においても何ら変わりがなかった。にもかかわらず,タイムカードを保管する第一審被告がこれらを提出しないため,タイムカードが欠けている月の権利行使を妨げられるということは余りにも不当である。同人らの作成したメモに不合理な点がない限り,これらから時間外労働(残業)時間が推認されるべきである。仮に,同主張が認められない場合でも,判明している範囲内で,最も時間外労働(残業)時間の少ない月で認定されるべきである。
(2)〔1〕第一審原告横野,同小倉については,日々の労働時間がタイムカードの記載上明白ではないが,常時長時間の時間外労働(残業)を行っていたことが明らかである。
〔2〕第一審原告横野が,部下であり同一のチームを組む第一審原告萩原政彦,同久保田,同山口,同紫冨田よりも先に帰宅することなど通常考えられない。したがって,右萩原らの時間外労働(残業)時間から,その時間外労働(残業)時間を推計することは可能であるし,それが不合理であるというのなら,他の第一審原告らの時間外労働(残業)時間の2分の1と推認する等して推計することも可能である。
〔3〕第一審原告小倉は,1988年11月16日から1989年12月15日,1990年5月16日から同年7月15日の間にはタイムカードを記載していたのに第一審被告はこれを提出せず,タイムカードによる立証が閉ざされている。したがって,この点の不利益を同原告に負担させるのは不当であり,同人が作成したメモによる認定,あるいは,他の第一審原告らの時間外労働(残業)時間から推計することが許されなくてはならない。
(二)出張先までの移動時間を労働時間に算入すべきこと
(1)出張の際の移動時間は出張先の業務に当然付随する職務であるので,これが労働時間に当たることは明らかである。まして,第一審被告では,その業務量の絶対的な多さから,常時長時間の過密労働を余儀なくされていたのであり,出張の際の移動時間といえどものんびりくつろぐことなどできず,打ち合わせや書類の作成,点検等の具体的な仕事を行うことが通例であった。したがって,このような観点からも出張の際の移動時間を労働時間から除外することは不当である。
(2)第一審被告は,従前(昭和53年ごろまで),タイムカードに基づいて労働時間の計算を行い時間外手当(残業代)の支給をしていた。現に,平成2年ごろ,時間外手当(残業代)の支給を検討した際にも,タイムカードを基に労働時間を試算しており,出張の際の移動時間は当然労働時間に含まれるとの前提を取っている。また,原審でも出張の際の移動時間が労働時間から除外されるべきであるなどとは主張していない。加えて,本件当時,時間外手当(残業代)を支給していた契約社員については,移動時間も労働時間と見做す取扱いをしていた。これらの背景には,前記のとおり,移動中といえども仕事を行わざるを得ない実態があった。したがって,第一審原告らの出張の際に,その移動時間を労働時間として見做すのは当然である。
(3)なお,第一審被告は,タイムカードに記載された時刻と「出張申請及び報告書」から推知される労働時間の始期・終期が相違しており,タイムカードの記載によって出張時の労働時間を把握することができない旨主張する。
しかし,右「出張申請及び報告書」は出張費用(交通費,日当,宿泊料等)を精算する目的のみから作成されたもので,労働時間を把握する目的で作成されたものではない。したがって,その記載は日当算定に必要な範囲の大まかなものとなっている。しかも,第一審被告の移動時間についての批判は,移動時間を過大に見積もり,憶測の域を超えるものではない。第一審被告は,タイムカードで従業員の労働時間を管理し,その記載も厳正に行われていたから,タイムカードで出張期間中の労働時間を把握し得ることは当然である。
(三)第一審被告が消滅時効を援用することが権利の濫用に当たることについて
(1)第一審被告には時間外労働(残業)に対し割増賃金(残業代)を支払う義務がある。タイムカードは時間外労働(残業)時間を算出する唯一の資料であり,これを保管していたのは第一審被告であるから,労使間の信義則上の義務として,第一審被告にはタイムカードを提出する義務がある。
(2)第一審原告らは,第一審被告に対し,証拠保全の申立を行う以前から,タイムカードの写しを,直接もしくは労働基準監督署を介するなどして,提出するよう要求していた。ところが,第一審被告は,右要求をことごとく拒否した。その理由が割増賃金(残業代)を免れることにあったことは明らかであり,タイムカードを提出しなかったことが,第一審原告らの権利行使に対する妨害行為に当たることはいうまでもない。
(3)したがって,第一審被告がタイムカードの提出を拒否しながら,消滅時効の援用をなすことは右労使間の信義則に反し,権利の濫用として許されない。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士契約をしている弁護士にご確認ください。また、個人の方で、交通事故の示談や慰謝料の交渉、相続の方法や遺言の形式、会社都合の不当な解雇、原状回復(敷金返還請求)や借金返済の解決方法、家族の逮捕などの刑事弁護士が必要な刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
二 当審で以下の主張を付加した外,当事者双方の主張は原判決の事実第二記載のとおりであるので,これを引用する。
1 第一審原告らの主張
(一)タイムカードのない部分の時間外労働(残業)について
(1)第一審原告斉藤,同萩原政彦,同久保田,同小黒は,いずれも時間外労働(残業)に従事し,タイムカードを正確に打刻していた。ところが,タイムカードの一部が第一審被告から提出されていない。第一審原告らは,常態として時間外労働(残業)を強いられていたのであり,このことはタイムカードのない月においても何ら変わりがなかった。にもかかわらず,タイムカードを保管する第一審被告がこれらを提出しないため,タイムカードが欠けている月の権利行使を妨げられるということは余りにも不当である。同人らの作成したメモに不合理な点がない限り,これらから時間外労働(残業)時間が推認されるべきである。仮に,同主張が認められない場合でも,判明している範囲内で,最も時間外労働(残業)時間の少ない月で認定されるべきである。
(2)〔1〕第一審原告横野,同小倉については,日々の労働時間がタイムカードの記載上明白ではないが,常時長時間の時間外労働(残業)を行っていたことが明らかである。
〔2〕第一審原告横野が,部下であり同一のチームを組む第一審原告萩原政彦,同久保田,同山口,同紫冨田よりも先に帰宅することなど通常考えられない。したがって,右萩原らの時間外労働(残業)時間から,その時間外労働(残業)時間を推計することは可能であるし,それが不合理であるというのなら,他の第一審原告らの時間外労働(残業)時間の2分の1と推認する等して推計することも可能である。
〔3〕第一審原告小倉は,1988年11月16日から1989年12月15日,1990年5月16日から同年7月15日の間にはタイムカードを記載していたのに第一審被告はこれを提出せず,タイムカードによる立証が閉ざされている。したがって,この点の不利益を同原告に負担させるのは不当であり,同人が作成したメモによる認定,あるいは,他の第一審原告らの時間外労働(残業)時間から推計することが許されなくてはならない。
(二)出張先までの移動時間を労働時間に算入すべきこと
(1)出張の際の移動時間は出張先の業務に当然付随する職務であるので,これが労働時間に当たることは明らかである。まして,第一審被告では,その業務量の絶対的な多さから,常時長時間の過密労働を余儀なくされていたのであり,出張の際の移動時間といえどものんびりくつろぐことなどできず,打ち合わせや書類の作成,点検等の具体的な仕事を行うことが通例であった。したがって,このような観点からも出張の際の移動時間を労働時間から除外することは不当である。
(2)第一審被告は,従前(昭和53年ごろまで),タイムカードに基づいて労働時間の計算を行い時間外手当(残業代)の支給をしていた。現に,平成2年ごろ,時間外手当(残業代)の支給を検討した際にも,タイムカードを基に労働時間を試算しており,出張の際の移動時間は当然労働時間に含まれるとの前提を取っている。また,原審でも出張の際の移動時間が労働時間から除外されるべきであるなどとは主張していない。加えて,本件当時,時間外手当(残業代)を支給していた契約社員については,移動時間も労働時間と見做す取扱いをしていた。これらの背景には,前記のとおり,移動中といえども仕事を行わざるを得ない実態があった。したがって,第一審原告らの出張の際に,その移動時間を労働時間として見做すのは当然である。
(3)なお,第一審被告は,タイムカードに記載された時刻と「出張申請及び報告書」から推知される労働時間の始期・終期が相違しており,タイムカードの記載によって出張時の労働時間を把握することができない旨主張する。
しかし,右「出張申請及び報告書」は出張費用(交通費,日当,宿泊料等)を精算する目的のみから作成されたもので,労働時間を把握する目的で作成されたものではない。したがって,その記載は日当算定に必要な範囲の大まかなものとなっている。しかも,第一審被告の移動時間についての批判は,移動時間を過大に見積もり,憶測の域を超えるものではない。第一審被告は,タイムカードで従業員の労働時間を管理し,その記載も厳正に行われていたから,タイムカードで出張期間中の労働時間を把握し得ることは当然である。
(三)第一審被告が消滅時効を援用することが権利の濫用に当たることについて
(1)第一審被告には時間外労働(残業)に対し割増賃金(残業代)を支払う義務がある。タイムカードは時間外労働(残業)時間を算出する唯一の資料であり,これを保管していたのは第一審被告であるから,労使間の信義則上の義務として,第一審被告にはタイムカードを提出する義務がある。
(2)第一審原告らは,第一審被告に対し,証拠保全の申立を行う以前から,タイムカードの写しを,直接もしくは労働基準監督署を介するなどして,提出するよう要求していた。ところが,第一審被告は,右要求をことごとく拒否した。その理由が割増賃金(残業代)を免れることにあったことは明らかであり,タイムカードを提出しなかったことが,第一審原告らの権利行使に対する妨害行為に当たることはいうまでもない。
(3)したがって,第一審被告がタイムカードの提出を拒否しながら,消滅時効の援用をなすことは右労使間の信義則に反し,権利の濫用として許されない。
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