2022年、まるちゃんが演じたことで私も初めて触れたヘドウィグの世界。
東京と大阪、計3回の観劇を通して、
ヘドウィグ初心者が観たこと感じたことを書き残しておきます。
※記憶違いがあればすみません
舞台は2022年のコロナ禍、
とあるライブハウスのステージ
ド派手なメイクとウィッグ姿のヘドウィグが観客に向け自分の半生を歌い、独白する形で物語は進んでいきます。
まず目を引くのは、まるちゃんの細くて長い脚と
その割にはガタイのいい上半身、
肩から腕にかけてのすべすべモチモチした筋肉
歌詞は全てオリジナルの英語歌詞、
とにかく発音がキレイで聴きやすい。
♪TEAR ME DOWN
生バンドの爆音に合わせ、
誰もが敵、かかって来なさい
と、挑発的に歌い叫ぶヘドウィグに観客は手拍子で盛り上げる。
ベルリンの壁マントをバーンと開く堂々たる姿は圧巻!
彼女はいま、自分の曲を盗んでビルボードチャート1位のロックスターに上り詰めたかつての恋人・トミーの全米ツアー会場をストーカーのように追い回し、音漏れが聴こえるほどすぐそばでライブをする日々。
トークではかなり卑猥な表現もあり、(お口で・・・)
まるちゃんお得意の音芸が炸裂してました笑
(毎回アドリブもふんだんに散りばめられていたことは、過去記事に書いた通りです)
コロナ感染対策も上手く取り入れられてて、扉の開閉音と差し込む光で表現された音漏れシーン、
聴こえてきたのは、隣の会場でファンへの愛を叫ぶトミーの声(←まるちゃんのイケボ♡)
ここで一人二役なのだと気づかされます。
怒りの感情を爆発させるヘドウィグ、
彼女が世間に注目されるきっかけとなったトミーとのスキャンダル(事故)に言及します。
「謎の女は誰?ですって!?」
ヒステリックに叫んだあと、突然笑い出したと思ったら、急に静かに
「笑うのは、笑わないと泣いちゃうから・・・」
この台詞に、ヘドウィグの言動・・・もっと言えば生き方の全てが表れてるんじゃないか、と気付かされて切なくなったし、
丸山隆平という人間を少しは知ってるファンとして、ここはどうしても本人と重ねてしまい胸が締め付けられるシーンでした。
幼いハンセル(=ヘドウィグ)に性的イタズラをしていた父親。
それを目撃し、父親を家から追い出した母親は、
その後、息子を愛せず、触れることすらしない。
寂しさを紛らわすように、オーブンの中に頭を突っ込んで米軍ラジオを聴き、ロックに夢想する少年時代。
ある日、母親から聞かされたのは、プラトンの「愛の起源」の物語。
ストーリーの重要な核となるこの哲学を、
ヘドウィグが美しく丁寧な手振り付きで歌う。
(バックに映るアニメーションがまた素敵)
♪THE ORIGIN OF LOVE
──太古の昔、人間の性別は3種あった。
男と男、女と女、男と女、が背中合わせにくっついた形。
人間の力を恐れるようになった神様によってその身体が真っ二つに引き裂かれると、
元の姿に戻ろうとして、互いに引き裂かれた半身(=カタワレ)を求め合うように。
そして一つになろうと体をぶつけ合う・・・
これが男女の愛の起源。
初めてプラトンの「饗宴」に触れた私。
そっか、ならば同性愛だってとても自然なことなんだ、とストンと腑に落ちました。
カタワレはどこ?
それは男なのか女なのか?
その命題と並ぶもう1つのキーワードは「壁」
ここから連れ出してくれるかもしれないアメリカ軍人・ルーサーとの出会いは、運命だと思いたかったよね・・・
♪SUGAR DADDY
テンガロンハットを被って歌い踊るヘドウィグはとにかく可愛い♡そしてエロい♡
(舌でペロンって舐め上げたり、両膝ついて腰を突き出したり・・・///)
お菓子がたくさん出てくる可愛い曲に見えて、実は隠語だらけの性的な歌詞だと知ってビックリ!
あまりに魅惑的で挑発的なおねだり曲。
冷戦下の東ドイツからアメリカへ渡るためには女になって結婚する必要がある、
ルーサーの提案に母親は大賛成で自分の名前「ヘドウィグ」とパスポートを与え、強引に手術台へと送り出すが、手術は失敗・・・
股間には怒りの1インチが残ってしまう。
♪ANGRY INCH
スタンドマイクを短く持って暴れまくる。
もう男でもなくなり、女にもなれない、
やり場のない怒りに満ちたシャウトが胸を突く。
結婚しアメリカへ渡るも、すぐ新しい女を作ったルーサーに捨てられる。
そして、結婚からちょうど1年後の同じ日、
ベルリンの壁が崩壊。
1年待てば手術などしなくても渡米できたのに・・・
ルーサーから与えられたウィッグを床に投げつけた後の失意の台詞が哀しい
「アタシ専用の地獄、ヘッド…ウィッグ」
♪WIG IN A BOX
鍵盤の音だけが優しく響く中、
切なく、胸が締め付けられるような歌い出し。
そこにバンドが加わり空気が一変、
立ち上がって、前向きに生きる覚悟を歌う。
メイクやウィッグで武装することで自分を奮い立たせる彼女の健気さが愛おしくてたまらない曲。
I put on some make up~♪
ここ歌いながら頬に手を当ててメイクする仕草が可愛い!
ウィッグをいくつも変えながらキュートな表情を見せてくれました。
本来なら会場一体となってみんなで歌うところ、
「今は無理だけど心の中でなら歌えるわよね♡」
って、カウントとってくれて、みんなで手拍子するところ、とても幸せな時間だったなぁ。
急にテンポが上がって演奏が激しくなった間奏中、
ステージ奥で黄色いドレスに生着替え(!)
後ろ向きで全てをイツハクにまかせ、手だけで踊るヘドウィグ。
着替え終わると、バンドとノリノリの掛け合いが始まり、盛り上がりは最高潮に!
旦那・イツハクの話。
かつて、クリスタルナハトの名で活躍するクロアチアで一番有名なドラァグクイーンで、その人気は共演したヘドウィグを凌ぐほどだった。
へそを曲げたヘドウィグにイツハクは自分を一緒に連れて行って欲しいと頼む。
ヘドウィグは受け入れる代わりに二度とウィッグをつけないことを約束させた。
「何かを手に入れるためには何かを手放さなければいけないのよ」
かつて母親に言われた言葉を今度はイツハクに強要するヘドウィグ・・・
ルーサーと別れた後、いろんな仕事をしながら、音楽を始めたヘドウィグは、
ある日、ベビーシッターをしていた家の息子・トミー・スペックに出会う。
そして、韓国軍人の妻たちを集め、アングリーインチという名のバンドで、トミーの前で初めて自分が作った曲を聴かせる。
♪WICKED LITTLE TOWN
トミーに音楽を教え、自分が知ってる全てを叩き込み、最後は彼にトミー・ノーシスの名を贈る。
共に曲を作り、ステージにも立つようになり、徐々にファンもつき始める。
楽しかった日々の記憶を辿り、懐かしそうに語るヘドウィグ。
2人が会話する場面、
二役を見事に声だけで演じ分けるまるちゃん、さすがでした!
ある日、ヘドウィグは両親と揉めて家を飛び出してきたトミーを優しく抱きしめて慰める。
「アタシはこんな風に抱きしめられたことなんて無かったけど・・・」
この台詞を聞くと、愛されずに育った境遇でこんなにも温かく人を愛せるヘドウィグが愛おしく、抱きしめてあげたくなりました。
ヘドウィグはトミーの額にトレードマークとなる大きなシルバーの十字架を描く。
まだキスもしたことなかった2人が、一線を超えようとする場面、
トミーがヘドウィグのスカートの中に手を入れ、初めてそこにあるモノに気づく。
・・・長い沈黙・・・
驚き、逃げようとするトミー、
「私にはこれしかないの」
「・・・愛してるよ」
「だったら私を正面から愛してよ!」
去っていくトミー・・・
♪THE LONG GRIFT
歌えなくなったヘドウィグに代わり、イツハクが歌う
You gigolo~♪が切なく耳に残ります。
ステージに戻ってきたヘドウィグが、ピアノの悲しい旋律に合わせて歌う
♪HEDWIG’S LAMENT
(♪心のカケラをなくしたアタシを
誰もが突き刺して
アタシはバラバラに切り刻まれる)
ここはもう胸が締め付けられて泣きそうになる。
からの、間髪入れずに、
♪EXQUISITE CORPSE (美しい死体)
怒りや悲しみ、色んな感情を全て爆発させながら
ぶっ壊れるパンク、
バンドの爆音に激しいシャウトの連続、
歌うというより、もはや泣き叫んでるような凄まじい狂気!
突然、ヘドウィグは全てを脱ぎ捨て、黒のパンツ一枚の姿になり、ステージ奥に向かっていき、倒れ込む。
バンドがさらに激しく音を掻き鳴らす中、
かなり長時間、うつ伏せ状態で突っ伏したまま。
2階席から双眼鏡で見るとモゾモゾと手が動いてる。
音が止むと、そこに立っていたのはトミー(!)
メイクはほとんど消え、額にはあの十字架
そして、手にはベース!
(まるちゃんがベーシストだからこそのこの計らいに感謝します)
「最後の曲です。
彼女が今どこに居るかはわからない・・・
でも、きっと彼女に届くと思う」
♪WICKED LITTLE TOWN
ヘドウィグから初めて聴かされたこの曲
でも、さっきとは歌詞が違う。
Forgive me for I did not know~♪
(許して、知らなかったんだ
僕はただの少年だったから・・・)
ついさっきヘドウィグとして歌った声とは明らかに違う、トミーの声でした。
ずっと2階席、上のほうを見据えて歌っていたのは、大きな会場で歌ってるトミーと小さな会場で歌うヘドウィグとの演じ分けかな。
イツハクがヘドウィグにウィッグをかぶせようとしたその手を止め、イツハクの頭にかぶせます。
そして、優しい眼差しで見つめ、
くるりと向こうを向かせて背中を押す・・・
トミーへの執着を捨て、許し、
イツハクを解放し、
自分自身も呪縛から放たれた瞬間。
♪MIDNIGHT RADIO
トミーのままの格好だけど、
この時は武装を脱いだありのままのヘドウィグとして歌っています。
一語ずつ噛み締めるように
(♪君はそのままで完全だって知っていて)
そう、あなたはそのままでいい。
たとえ欠けてても、余分でも、どちらでもなくても一人の人間として完全。
途中、「Lift up your hands」でみんなで静かに拳を上げる
(♪そのままで十分)
(♪君は輝いている)
最後、ドレスを着て現れたのは、本来の自分を取り戻したイツハク
たぶんこれは、あの、クリスタルナハト。
最後の歌声に感涙、
二人は新たなそれぞれの道へ──。
*****
喜怒哀楽全てが愛おしくてたまらない
人生の宝物にしたいと思える作品でした。
まるちゃんのおかげでヘドウィグに出会えたこの幸運に感謝します✨
客席も立ち上がって一緒に歌える時が来たら
またこのキャストで再演してくれると信じて・・・。