美和子は私を見て「ごめん、来てくれたんだ」と言った。

「どうしたの?最近音沙汰がないなって思っていたら何の騒ぎ?」と私。


優しい言葉というか腫れ物にさわるみたいな事は私は言えないし言わない。
美和子は死のうとして薬を飲んだのではないという確信が私にはあった。


「何に不満があってこんなことしたの?苦しかったでしょ?お母さんとも話をしないって?」と聞くと「あの家にいたら頭がおかしくなりそうだった。何て説明したらいいかわからないけど孤独だと思った」と答えた。


甘い。

美和子の三番目の子供は二番目とは少し離れてから生まれた。知的障害があった。母親としてしっかりしなくちゃならないのに…


「何で孤独なの?三人の子供達がいて、働かないでそれなりの生活が出来て、したい事をやらせてもらえて…私から見たらうらやましい限りだよ」


「そうかもしれない。でもすごい孤独だと思った。誰も私を必要としていないと思った。あの家にいたら狂いそうだった。」


美和子の自宅は美和子の希望通りに建てられた。新築して何年も経たないのに改築を二回もした。改築の度に「ハウスメーカーが悪い、私が言う通りにしてくれなかった」と勝手な事を言っていた。


「家が悪い訳じゃないでしょう?美和子の好きなように建てたんじゃなかった?改築もしたし。孤独っておかしいでしょ?子供達が母親を必要としているのわかるでしょ?今、入院したと聞いてどんな思いでいる事か」


「うん。子供達の事は気になる。でもあの家には戻りたくない」


あの天真爛漫な美和子が壊れていた。


次の日も会いに来ることを約束して病室を出た。


美和子の旦那さんとお母さんが待っていた。
「美和子、何かしゃべりましたか?」

「うん、私が思うには死ぬつもりはなかったみたいだよ。家が嫌だって訳わかんない事を言ってた。あの家にいたら狂いそうだって」

「やっぱり、さぁさんには話はするんだ。」


「ひょっとして、躁鬱じゃないかな?どう思う?自分は孤独だとか言ってたけど」と私は言った。


「三日ほどで退院出来るらしいんで、申し訳ないけどさぁさん…明日も来てもらえませんか?」と美和子の旦那さんとお母さんに頼まれた。

私は「美和子とも約束したので明日も夕方来ますね」と言い病院を後にした。