「さぁ~、さぁ~」
杉原さんが私を呼んだ。
私は黙って立ち止まり振り返った。
「さぁ、俺、驚いたよ。結婚したって聞いて」
「うん、でも何年たったと思って。杉原さん、元気そうで良かった」
「中田クンと幸せなんだろう?」
「幸せじゃない…」
「え?」
「全然幸せじゃない。」
「さぁ、どうした?」
「私、間違ってた。結婚なんかして間違ってた。」
「そんなこと言うな、子供いるんだろ?」
「子供は可愛いよ。でも、別問題。」
「そっか、でもどこの夫婦にも色々あると思うぞ。」
「私、行くね。」
「きっとまた会えるよな?元気でいるんだぞ。頑張るんだぞ。」
私は珠里が寝ている車に向って歩き始めた。
杉原さんは再び練習場に入って行った。
杉原さん…
杉原さんは付き合っていた頃、「おまえは俺の一番だ」って言ってくれた。
杉原さんと再会して私は、「やっぱり私はこの人じゃなきゃダメ」と思った。
怖くて口に出す事は出来なかったが…
車の中で珠里はスヤスヤと眠っていた。
私はしっかり生きなければならないと思った。