北陸新幹線が開通することによって、観光客が増加して観光関連の収入が増加することや、産業の活性化などの効果があるなど、様々なメリットがあると言われています。
一方で、首都圏へのアクセス向上により購買客が首都圏へ流出するストロー現象が起こるなど、幾つかのマイナス面もあると言われています。
長野新幹線を事例にして、北陸新幹線開業が及ぼすマイナス面を見てみようと思います。
新幹線が開通して時間距離が縮まり、地域への投資が増えて雇用が生まれ、従業者数を増加させる効果をもたらしました。
一方で、長野新幹線の開業によってそれにより、長野県北部も東京からの日帰り圏になりました。そのため、長野市内にあった支店や営業所が閉鎖や縮小して、その分事業所数と従業者数が減少しました。投資増による従業者増よりも事業所閉鎖や縮小の従業者減の方が多く、トータルでは従業者数は減少してしまったようです。
東京から日帰り圏となったことは、それまで宿泊を伴っていたビジネス客や旅行客が日帰りとなるケースも増えました。結果として宿泊客数が減少して、ホテルや旅館の淘汰が相次ぎました。
また、新幹線が新たに開業すると、並行している在来線はJRの運営から切り離されて第3セクターになります。長野では信越本線の一部がしなの鉄道に移管されて第3セクターになりました。
しなの鉄道は、長距離客が新幹線に移乗したことで、開業当初から厳しい経営状況となりました。経営合理化や営業努力などにより、経営状況は上向きましたが、利用者は減少傾向にあります。
新幹線開業と同時にしなの鉄道の運転本数が減り、地元住民の利便性は新幹線開業前と比べて悪くなってしまいました。
長野新幹線の開通により長野で起こったことは、北陸新幹線の開通によっても同様なことが起きる可能性は高いと思います。
現在は、金沢と新潟間で特急が1日5往復走っていますが、北陸新幹線開業とともに廃止になります。新幹線で通勤をするとなると、これまでの特急よりは料金が高くなるため、各駅停車を利用せざるを得なくなります。そうなると、これまでの倍近く時間が掛かってしま うこともあり、地元の人にとっては負担が大きくなります。
一方で、北陸新幹線開通で、石川県と富山県から東京・名古屋・大阪への鉄道のアクセスにどのような変化があるのかを下の表で見てみましょう。
金沢駅からの鉄道アクセス
富山駅からの鉄道アクセス
金沢からだと、東京より名古屋や大阪の方が約1時間半も所要時間が短かったのが、料金はこれまでより高くなりますが北陸新幹線開業によって所要時間はほぼ同じになります。
富山からは、東京・名古屋・大阪までの所要時間が同じくらいだったのが、東京への所要時間が1時間以上短くなります。
これにより、北陸からの人口転出にも変化が起きることが予想されます。下の表で、石川県と富山県から三大都市圏への平成26年の転出人数を見てください。
石川県と富山県から三大都市圏への転出人数(平成26年)
資料出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告」
石川県と富山県から転出する人数は、現在でも首都圏が最も多くなっています。北陸新幹線が開通すると首都圏へのアクセスがよくなって、今よりも首都圏への転出人数が多くなり、更に首都圏への一極集中が進むことが予想されます。
北陸新幹線が開業して便利になり、北陸が活性化する起爆剤になることは確かなことです。一方で、マイナス面にも着目して、その対応をすることも忘れてはならないと思います。
北陸新幹線は敦賀まで延伸される予定になっていますが、その先については未定のままです。北陸新幹線が延びて東海道新幹線につながると、非常に大きな意味合いがあります。それは、首都圏と関西圏を結ぶルートが2つできることになり、東海道新幹線が通行不可になっても北陸新幹線を利用すれば移動が可能になることです。
東海道新幹線が通っている地域は、今後大きな地震が発生すると言われています。そうなると東海道新幹線が大きな津波の影響を受けて、通行が不可能になる恐れがあります。そういったことから、北陸新幹線を早期に延伸することが必要だと思います。
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