日本では、ホテルというのは法律でどのように定義されているか知っているでしょうか?

 

旅館業法では、ホテル営業は次のように定義されています。

 

様式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。

 

また、ホテルに関連する法律には国際観光ホテル整備法というものがあります。この法律に基づいて政府の登録を受けると、固定資産税の軽減措置を受けられたり、海外に対する宣伝を国が行なってくれたりと大きなメリットがあります。

 

ホテルが登録を受けるためには、決められている基準を満たす必要があります。その中には、以下のようなものがあります。

 

・洋式の朝食が提供できること

 

・洋朝食を提供できる厨房が付属していること

 

洋朝食とは「コーヒー・紅茶、トースト等のパン類、卵料理等」となっています。つまり、ホテルとして登録を受けて固定資産税の軽減などの恩恵を受けるためには、和食だけを提供する場合は駄目だということになります(注)。

 

このようなことは、GHQの占領下で外国からの観光客の多くがアメリカ人であったときに、それに対応するために法律で定めたようです。和食が世界的なブームになっているので、ホテルによっては特徴を出すために和食に力を入れるところもあると考えられます。また、和食と洋食の両方を出すとなれば、それだけコストアップにもなります。しかし、60年以上も決められた規制がそのまま残っているために、ホテルであれば洋朝食を提供しなければなりません。

 

また、ビジネスホテルの中には、宿泊以外のサービスはできる限り省くことによって料金を安く設定したい考えるところもあるのではないでしょうか。ところが、上記のように洋朝食を提供でき、厨房を備えていることがホテルの基準になっています。最近はコンビニなどで朝食を買ってくる宿泊客も少なくないようですし、食事を提供せずにその分設備などにお金を掛けないようにしたくても、それもできません。

 

更に、旅行業法では設備や構造について都道府県ごとに基準を追加できるようになっています。東京都ではロビーと食堂を義務付けています。

 

固定資産税の軽減措置を受けなくても、顧客の中心が国内客で、朝食を提供せずに厨房・食堂・ロビーを設置しなければ、その方が効率は良いのではと思うのですが、東京にあるホテルではそうはいきません。

 

食堂やロビーがないと、ホテルではなくラブホテルとされてしまうからです。ラブホテルになると、風営法が適用されて18歳未満は立ち入り禁止など更に多くの規制に縛られることになります。食堂やロビーは必要ではなくても、仕方なく設けているホテルもあるようです。

日本には、農産物についておかしな規格があったり美味しい牛乳を流通させない規制があったりと 、事業者の足を引っ張るようなものがまだまだ多くあります。先日、日本経済再生のための第3の矢というものが出されました。日本の経済成長を促すには、政府が無理に後押しをするのではなく、むしろ事業者の足枷になっている不要な規制を取り除くほうが有効ではないかと思います。


注:省令により平成26620日から国際観光ホテルの条件から、「洋食の提供」がはずれました。