2007年3月x日

桜が咲き始めた頃。
その日は朝から強い雨が降っていた。
外に出た途端に雨が強まり、雷を伴う。

「なんだよ」と思わず空を見上げた。

・・・

・・・何故か1つのフレーズを思い出した。

『東京には空が、無い』

誰かから聞いたのか、誰かの詩の一節なのか。
おそらくは幼い頃に聞いた言葉。
その言葉だけが脳裏を過ぎる。



東京には空が無い。

雑居ビルの間から小さく覗く空。
張り巡らされた送電線で覆い隠される空。
白とも青ともいえぬ混沌とした空。

こんな空は「空」じゃないとでも言いたいのだろうか。
それとも何かの例えなのだろうか。

珍しくこんな思考をめぐらせる自分に、少し可笑しくなった。
別に、空に対して何か思い入れがある訳でもなく。


そんな事を考えるうちに雨は弱まり、そして止む。

太陽光が雲の隙間から帯状に降り注ぐ。

風が強い。
急速に雲が切れていく。

劇的に変化するその空に、しばらく魅入られた。



東京には空が無い。

この言葉をつづった人は、どんな空を「空」と呼ぶのだろう。

が、そんな事はどうでもよくなった。
自分にはこの空で十分だから。