加藤雅美は立ち上がった。
「ちっ・・・このガキ・・ただの中坊じゃねーな。」
最初の一発は油断した。
だがそれで目が覚めた。目の前に立っている板野友美という中学生は紛れもなく強い。
しかし加藤雅美もS・D・Nの幹部として負けるわけにはいかない。
「どーした?こいよ、加藤。」
板野友美は手のひらをくいくいっと動かしながら加藤を挑発した。
しかし加藤は冷静だった。
「・・・加藤の顔つきが変わった。」
二人のケンカを見ていた川崎希がつぶやいた。
「いくぞ!!」
加藤がパンチを出す。
左右のコンビネーションの連打。早い。
ガードできなかった1発が友美の頬に当たる。
しかし友美はひるまなかった。
負けずに打ち返す。
加藤のパンチが当たれば、友美のパンチが当たる。
壮絶な乱打戦になった。
「ハァッハァッ・・・幹部なだけあるじゃねーか」
「ハァッハァッ・・・テメーもただのガキじゃねーな・・・」
友美が右ストレートを放った。
頬をかすめながらよけた加藤は、友美のボディを狙う。
友美は腹部にパンチが当たるのがわかったが、同時に相手の顔に拳を打ち込んだ。
一瞬、加藤がひるんだ。
「オオァァァアアアァ!!」
その隙を見逃さずハイキックを打ち込む。
加藤は間一髪でガードした。が、すぐに次の蹴りが飛んでくる。
友美の蹴りの連打はまるで川崎のケンカのようだった。
「あいつ・・・もうあたしのスタイルを盗みやがったか・・・」
川崎がつぶやくと、隣にいた石田晴香が笑った。
ついに友美の膝蹴りが加藤の腹部をとらえた。
「ガハッ!」
加藤が地面にうずくまる。
「終わりだ、加藤。」
「オラァァ!」という掛け声とともに友美が華麗に舞った。
見ていた者からすれば、まるでスローモーションを見ているような華麗な回し蹴りが加藤の頭部を貫いた。
加藤は意識を手放した。
「くッ・・・使えない雑魚どもが・・・・」
それを見ていたS・D・Nの西国原は歯を食いしばった。
「終わりだな西国原!こいつらの勝ちだ!」
川崎が叫ぶ。西国原は何も言ってこなかった。
「まぁXANADUでもない、ただの中学生にやられたんだ。ぐうの音も出ないだろ。よし!帰るぞ板野、石田。」
「は、はい!友美、大丈夫?」
「余裕だよ。」
3人がクラブから出て行こうとすると、西国原が叫んだ。
「川崎ぃ!!!!!!」
「・・・この件はこれで終わりだと言ったはずだけど?」
「・・・・・いつまでも・・・おとなしくしてると思うなよ・・・・・」
「なに?」
「今に見てろ・・・・近いうち・・首洗って待ってな・・・大島にも伝えとけ・・」
「そっちがその気なら、ウチはいつでも相手になるさ。じゃあな。」
そう川崎が言うと、3人はクラブを出た。
「・・・なんか最後あいつ言ってましたけど・・・抗争とかになんないっすか?」
しばらくして晴香が川崎に聞いた。
「まぁ、停戦協定を結んでるとしてもおとなしく黙ってるような奴らじゃないからね。なるようにしかならないさ。」
「結構、楽天的なんすね。」
「それにウチにはあたしなんかよりも、もっと強くて頼れる先輩方がいる。絶対に負けないよ。」
川崎はそう言うと二人の方にくるっと振り向いた。
「とりあえず、今日は二人ともよく頑張ったな。よく勝ってくれた。ありがとう。」
友美と晴香は急に礼を言われて照れてしまい何も言えなかった。
「ま、勝ったお祝いと言ったらなんだけど・・・今から焼肉でも食べに行こっか!もちろんおごるよ!」
「いやいや!まずは病院でしょ!?晴香なんて鉄パイプで殴られてんすよ??」
「焼肉!?おごり!?行きましょう行きましょう!!」
「晴香・・・結構・・・元気だね。」
「友美お腹すいてないの?あたしケンカしたらお腹すいちゃった!早く行きましょうよ川崎さん!」
「わかったわかった。板野は行かないの?」
「行きますよ!」
こうして3人は笑いながら帰っていった。
これから大きな戦いに巻き込まれていくなんて、このとき友美は想像もしていなかった。
第9話へつづく。