3人でS・D・Nのアジトへ乗り込んだ日から、板野友美と石田晴香は川崎希とよく会うようになっていた。
友美と晴香は「川崎希から一目置かれている2年生」として注目されるようになった。
「友美、今日も川崎さんのとこに行くの?」
「行くよ。」
友美はあの日から川崎にケンカの稽古をつけてもらっているのだ。
「晴香は?」
「あたし今日ちょっと用があるから先に帰るね。」
「そっか。」
晴香が帰ったあと、友美は川崎が待っている屋上へ登った。
ドアを開けると、いつも通り川崎が座って景色を眺めている。
「川崎さん。」
「お、板野。いいところに来た。キミ今日時間ある?」
「まぁ・・とくに予定はないですけど。」
「よし、じゃあ行こう。」
「えっ?どこにですか?」
「喫茶店にお茶を飲みにさ。」
言われるまま友美は川崎についていった。
「確かに川崎さんってオシャレな喫茶店とか似合うもんな・・・」と友美が考えていると、川崎が口を開いた。
「今から喫茶店で友達と会う約束をしてるんだ。」
「え?あたしも居ていいんですか?」
「大丈夫。そいつに板野を紹介しようと思ってたとこだし。」
「・・・で、誰に会うんですか?」
「黒子中学校の浦野一美って子。あたしと同い年で黒子中を仕切ってる。」
「へぇー。強いんですか?」
「もちろん。」
「ふーん・・・黒子中の浦野ねぇ・・・」
「板野。あたしと一美は親友なの。だからあたしは黒子中と争う気はない。キミはあたしの後輩なんだから、勝手に黒子中ともめたりしないでよ。」
「はぁ。」
そして待ち合わせの喫茶店の前に着いた。
喫茶店の名前は「タネ」。
「それと板野。」
「なんですか?」
「さっきひとつ言い忘れてたんだけど、一美のことを『浦野さん』って呼んだらだめだよ。一美のことは『シンディー』って呼んでね。」
「シンディー??」
「そう。あたしもシンディーって呼んでるし、本名で呼んだら怒るから。」
「はぁ・・・なんでシンディーなんですか?」
「それは・・・見たらわかるよ。」
そう言うと川崎はドアを開けて店の中へ入って行った。
友美もそれについて行く。
中へ入ると黒子中の制服を着た女が2人いた。
1人が座っていて、その横にもう1人が立っていた。
「久しぶりシンディー。」
「あ、希~!久しぶり!」
『シンディー』と呼ばれた女は頭にティアラを着けていた。
友美は「見ればわかる」と言ったさっきの川崎の言葉を理解した。
「柏木も久しぶり。」
川崎がもう1人の立っている方に話しかけると、「柏木」と呼ばれた女はぺこっと頭を下げた。
「あれ希?その子は?」
「あぁこいつは板野友美。うちの中学の2年だ。今日はシンディーに紹介しようと思って。」
「そーなんだ。よろしくね!」
「・・・ども。」
友美は軽く頭を下げた。
川崎が椅子に座り、友美も横に座ろうとすると、頭を叩かれた。
「痛ッ!なんすか川崎さん!?」
「バカ。板野は立っといて。柏木を見習いなさい。あいつは柏木由紀っていって、板野と同い年だぞ。」
「ちぇっ。」
しょうがなく友美は川崎の隣に立つと、柏木と目が合った。
いつもならガンを飛ばす友美だが、川崎に「黒子中とはもめるな」と言われたばっかりだったのですぐ目を逸らした。
「で、話しってなに?」
「ニュースだよ、希。」
「ニュース?それは良いニュース?」
「うーん良いニュースではないかな。特に希には。」
「じゃあなおさら聞くしかないね。」
少し間を開けて、頼んでいたコーヒーを飲むと、シンディーは川崎の目を見ながらゆっくり言った。
「・・・小原さんが帰ってきたって。」
第10話へつづく。
