「兄さんにとっちゃあ、手足を切って生きながらえるこたあ、大して値打ちがないのさ。先生、命の値打ちってのは長さだけなのかい?」
TBS系 日曜劇場「JIN-仁-完結編」第5回(2011年5月15日放送)の澤村田之助のセリフより。
幕末の伝説的な歌舞伎役者・澤村田之助は鉛中毒で瀕死の先輩役者・坂東吉十郎を死ぬ前に舞台に立たせることが出来ないかと、医師である主人公・南方仁(みなかた・じん)に尋ねる。現代から幕末にタイムスリップしてきた仁は「鉛を体外に出す薬がない以上、手足を切って延命を図ることしか出来ない」という。
死ぬ前に一度、息子の前で自分の芝居を見せてやりたいと願っている吉十郎の思いを知っている田之助が放ったセリフが↑です。
この回は全体の大きなストーリーから言うと小休止的な感じでしたが、「クオリティ・オブ・ライフ」、「終末期医療」といった現代の医療でも抱えている問題に触れていました。
恥ずかしながら泣けました。テレビドラマ見て泣いたのっていつ以来よ?!いや、そもそも国産のテレビドラマ見て泣けたのって産まれて初めてじゃね?!
国内外、実に33個の賞を受賞した第一作の続編。このドラマ、主役、脇役の俳優さんが見事にピタリ、ピタリとハマっているのが凄いのですが、それだけじゃなく毎回のゲストも凄くハマるんですよね。
この回も、吉十郎を演じた吹越満さんが鬼気迫る演技を見せてくれていました。とてもロボコップ演芸をやっていた人と同じ人だとは思えませんでした(;^_^A。また吉十郎の息子・与吉を演じていた子役の大八木凱斗(かいと)くんの演技も泣けた・・・。この回は原作のコミックとは違うエンディングになってて賛否両論あります。またコミックスの方は歌舞伎の演目が「寿 曽我対面(ことぶき そがのたいめん)」であることに意味がありますが、ドラマではあまりありません。けど、僕はドラマのストーリーも「あり」だと思います。
確かに、命を長らえるだけじゃなく、どういう人生を送りたいか、とっても大事なことですよね。特に人生の残り時間があまりないと知ってしまった本人にとってはね。
ドラマでは終末期医療が良い結果に出たんだけど、実際は自分の家族が死ぬとしたら、周囲の人間は密かに「命を削る代わりに人生を輝かしいものにする」より「別に輝かなくてもいいから一分一秒でも長生きしてほしい」と思うのでは?自分なら絶対そうだと思う。とても本人には言えないけれど。周囲の人間にとっては命の値打ちはやっぱり長さだけだったりして。けど、命は本人ものだから、本人の望むようにしてやりたい。つらいね。
↓吹越さんのロボコップ演芸。既に大物政治家になったあのお二人も登場。なつかし。
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<JIN-仁-完結編 第5回ストーリー>
※自分のための備忘録なんで無駄に長いです。しかも読みにくい文章です。すびばせん。読み飛ばし推奨です。
現代から幕末の江戸にタイムスリップした脳外科医の南方仁。歴史上の人物と関わりを持ちながら、現代の医療知識で幕末の人達たちを助けている。
しかし、仁は実は自分は誰も助けていないのではないかと悩み始める。折角、懸命に助けた人達も、他のことが原因で結局、死に至ってしまう。歴史に修正力のようなものが働き、自分の治療が無駄にされているのではないか、助けた者の中には死なぬものもいるが、それは仁が、この世界に来ることによって何かが狂い、発病したのであって、自分がいなくても結局生きつづけた人達なのではないか、と。
そんなおり、江戸一の人気歌舞伎役者・澤村田之助から鉛中毒で瀕死の先輩役者・坂東吉十郎を来月の舞台に立てるようにしてやって欲しいと頼まれる。
吉十郎はスター役者であったが遊び人で、女房と幼子だった与吉を放り出していた。そのうち女房にも男ができ、邪魔者になった与吉は一座に転がり込んできた。与吉は9つになっていた。既に体を悪くしていた吉十郎は自分の先も長くないだろうからと、与吉に芝居を教え込もうとする。しかし、与吉は芸を全く覚えようとしない。
業を煮やした吉十郎は与吉に手を上げるようになり、与吉も口を固く閉ざすようになった。芸のために捨てられた与吉には役者稼業は怨みでしかなかったんだろうさ、と田之助は言う。
これは、もう他に奉公先を探すしかない、となったところで、吉十郎は一度だけ、自分の芝居を与吉に見せてやりたいと言い出した。
「俺が与吉に残してやれるものはもうそれしかねえんだよ。俺は人間のクズだ。恨まれて当然だ。今さら謝って許してもらおうたあ、思っちゃいねえし、そんなこたあ臭え芝居になって出来ねえよ。けどよお、俺が全てを注いだ芸だけは見せてやりてえんだよ。今のままじゃあよぉ、あいつ、クズの親父から産まれてきたんだって思って生きて行くしかねえだろ?けどよぉ、そのクズにもたった一つだけでも取り柄があったって思えりゃ、生きていくのがちっとはマシになるってもんじゃねえか。」
最初は1ヶ月で舞台なんて無理だ、手足を切って延命治療するしかないと言っていた仁。しかし、田之助から吉十郎が芝居をやりやがっている理由を聞き、そして「命の値打ちは長さだけなのかい?」と問われ、必死で治療を始めた。
吉十郎を診療所である「仁友堂」に運びこみ、壊疽部分が感染症を起こしているのでペニシリンを点滴し同時に食事療法も始める。白子干し、柚子や生姜などビタミンC、ミネラル、カルシウムを含んだものを多く摂らせた。また鉛中毒で失われたカルシウムを補うために塩化カルシウムの製造を始める。マウスを使ってこの時代の生薬が鉛を体外に排出させるものがあるかどうかも調べ始めた。
あまりの没頭ぶりに助手で看護婦役の橘咲(たちばな・さき)は心配をする。
仁は「負けたくないんです、歴史の修正力に。これまで何度も治したと思ったら足下をすくわれて、の繰り返しでしたから。今回は完璧に治したいんです。ここで負けたら私は認めるしかなくなるんです。自分にできることはほんの少しの延命だけで、結局は何も変えることは出来ないんだって。」
それを聞いて咲は言う。「延命だけはいけないのですか?全ての医術は所詮、延命にしか過ぎぬのではございませんか?人はいつか死ぬのでございましょう?」
「じゃあ、私は何のためにここに送られてきたのでしょうか・・・」答えは出なかった。
吉十郎は奇跡的にどんどん回復を始め、稽古も始められるようになった。
しかし、父親の病状が良くなっていくにも係わらず、与吉が喜んでいるようには見えなかった。それどころか、今度の演目「寿 曽我対面(ことぶき そがのたいめん)」の台本を隠してしまう。
「寿 曽我対面(ことぶき そがのたいめん)」の小林朝比奈役は吉十郎の当たり役。わざわざ、与吉に見せるために自分の一番得意な役をやらせてくれるようにしてもらったのに、こいつにはそれが分からないのか?
与吉に手を挙げる吉十郎。それでも与吉は台本を出そうとはしない。止めに入る仁たちに向かって、
「こいつは、俺のことが嫌いで嫌いで仕方がねえんだよ!」と吉十郎は叫んでいた。
そして、上演当日、化粧をし衣装まで着込んだ吉十郎だったが、直前に倒れ、立ち上がることができなくなり、結局舞台に立つことは出来なかった。
楽屋裏の布団に寝かされる吉十郎。楽になるように衣装は脱がされていたが化粧はそのままだ。
舞台が始まると吉十郎は与吉の顔を見ながら「ちきしょう。もうちょっとだったのになあ」とつぶやく。そこには息子に自分の晴れ姿をあと少しで見せられたのに、という無念さが滲んでいた。しかし、与吉はそれを聞いても表情ひとつ変えず、うつむくだけだ。
そこに仁が万一のためにと作っておいた道具を取り出した。それはゴムや布、包帯などで作られた腰・膝や足首を支える補助具だった。
よれよれになりながら、補助具を装着すると何とか、吉十郎は立ち上がることが出来た。
舞台には立てなかったが、布団の上で生涯最後の芝居を始めようとする吉十郎。しかし、与吉は部屋を飛び出す。部屋を少し出たところで、咲が与吉を捕まえる。
ここまで来て、まだ・・・俺の芝居は見たくねえってのか。吉十郎の顔に落胆の色が浮かぶ。しかし、咲は大丈夫だから、というふうに吉十郎にうなずいた。吉十郎は芝居を始める。
だが、与吉は咲の手を振りほどこうとして、父の方を見ようとはしない。
咲は言う。「本当は吉十郎さんがお芝居のことばかり考えているのが悔しくて、こんなこと(台本を隠すこと)をしたんでしょ?死にそうになっていても与吉ちゃんには一言もなしにお芝居のことばかりで、ひどいお父っつぁんよね。だけど本当は言いたかったことたくさんあって、でも素直に言えなくなってただけじゃないかな。与吉ちゃんと同じように。お父っつぁん、今、与吉ちゃんに話しかけようとしているんじゃないかな。」
咲は与吉が隠れながらもきちんと姿勢を正して父の稽古に見入っているのを知っていた。与吉は父を憎んでいたのではなく、自分の方を振り向いて欲しかっただけだったのだ。
咲の言葉を聞いて父を見る与吉。そこには補助具の力を借りて、よれよれになった足腰で自分に向かって必死に朝比奈を演じている吉十郎の姿があった。家族を放り出して芸に夢中になっている父ではなく息子に最後の晴れ姿を見せようとしている父の姿がそこにはあった。
しかし、吉十郎は体力の限界なのか、とうとう芝居の途中で倒れこんでしまう。もうだめだ。尋常でなく息が上がり、眼を閉じる吉十郎。
その時、「・・・や、やまとや・・・」
与吉の声だ。目をあけ、どうにか首だけ起こして与吉の方を見る吉十郎。
そこにはボロボロと大粒の涙を流している与吉の姿があった。口を開き何かを言おうとする与吉。声が出ない。やがて、「大和屋ぁ!」。吉十郎の屋号を叫んだ。
その声を聞き、必死に立ち上がり、芝居を続ける吉十郎。立っているのがやっとの吉十郎に「よ、にっぽんいちぃ」と声をかける与吉。吉十郎は死力をふりしぼって演技を続ける。
その光景を見ながら仁も彼なりの答えを見つけ出していた。
「つかの間の延命。もしかしたら延命にすらなっていないのかもしれない。こうしたことで命を縮めた可能性すらある。だけどこの瞬間には長さでは語れない命の意味がある。残された時間を輝かせるという医療の意味がある。」
そして息を引き取った吉十郎の横で与吉は田之助に父の跡を継ぎたいから芸を仕込んでくれと頼んでいた。
仁も「世代を超え受け継がれていく芸のように世の営みを超えていく物、歴史の修正力に抗えるものを俺も残したい」とこの時代で生きる意味を見出しつつあった。