私と同年代以上の人なら
きっと憶えているはず
ナンシー・ケリガン襲撃事件
当時は、この映画の主役
トーニャ・ハーディングが
ワイドショーを賑わせていたような…
二人はどちらも
オリンピック候補のフィギュア・スケート選手
その
ライバル同士の二人の間で起こった事件で
トーニャが元夫に頼んで
ライバルの膝を殴打するという
何ともワイドショーが喜びそうな
ドラマチックな事件
しかも
トーニャときたらいかにも悪事を働きそうな風貌
彼女の一挙手一投足が話題になりました
ナンシー・ケリガンは
オリンピックに出場し、銀メダルを獲得
一方
事件のおかげで真っ先に代表となり
2大会連続出場したトーニャは
靴ひもが切れるというアクシデントが
あったせいか
8位入賞に終わりました
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とにかく
激しい映画でした
虐待&DV
トーニャは幼い頃から暴力にさらされています
自分が悪いから殴られるんだ
こういう思考に陥ってしまう心理
何となくわかります
だから
夫からのDVも易々と受け入れ
暴力に鈍くなっていくという
負の連鎖
彼女が
母親からの愛情を渇望しているのが
痛いほど伝わってきて
いたたまれませんでした
"I'm proud of you"
という母のセリフを聞いた時
彼女の欲しかった言葉はこれだ
と涙がドッと溢れてきました
そして
アメリカの格差社会
劇中に描かれた貧富の差
トーニャの色んな意味での貧しさが
痛くて、辛くて
世界中を敵に回したヒール
壮絶な人生です
当時は世界中から憎まれていた
悪役のトーニャですが
画面の中の彼女は
ハングリー精神があふれ
何とも人間臭くて
応援したい気持ちも芽生えてきます
実際に身近にいたら友達にはなりたくないだろうけれど
結局のところ
真実はわかりませんが
私も含め
世界中の人々は
マスコミが面白可笑しく描きたてた
ヒールの彼女だけを見て
悪いヤツだと
決めつけていたような気がします
この映画を観た時
日本でも同じようなヒールがいたと
思い出しました
20年前に日本中を騒がせた
和歌山毒物カレー事件
の林真須美死刑囚
彼女も恰好のマスコミの餌食となり
マスコミは面白可笑しく
彼女のことを報道しました
私も当時は
彼女が犯人に違いないと
勝手に思い込んでいましたが
冤罪の可能性も指摘されています
というのも
彼女にはそもそも殺意が思い当たらない
状況証拠だけで死刑が確定
彼女は一貫して関与を否定しています
マスコミが作り上げた
林真須美像は
ふてぶてしい態度で
殺人を犯していても不思議ではない
視聴者がそう感じるような場面を編集し
私達もそれを信じてしまいました
私達は
松本サリン事件で
マスコミと視聴者が
全く関係のない人を
犯人に仕立て上げてしまう
冤罪の危険性を
しっかり学んでいたはずなのに…
そんなことを考えさせられる映画でした
でも
決して重苦しいだけの映画ではありません
主演のマーゴット・ロビー
母親役のアリソン・ジャネイ
この二人の演技のすごみ
脇役の人達の再現ぶり
素晴らしくて見応えありますよ
あっ、実は一瞬ウトウト
それを友達に話したら、あの映画で???と呆れられました