短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑫ご好評に付き、再度掲載
金吾は、毎日、取引所と会社の往復が日課になった。
朝、出社し、直ぐにヤスさんと一緒に出かける。 そして夕方、手控えを持って会社に戻る。ヤスさんは、取引が終われば、会社に寄らず殆どが場立の仲間と飲みに行き、会社には戻らないのである。金吾が手控えをやりだしてから、ヤスさんは、会社に戻る必要が無くなったと言ってもいい。
取引所には、金吾ほど若い人間の出入りはないが、『
おつかいさん 』と呼ばれる女性が出入りして、各会社との橋渡しをしているのである。
今日は、商い(売買)が閑散な為に、少し早く会社に戻れた。金吾の顔をみた番頭さんが、声をかけた。
「 金吾、えらい早いな。 」
「 今日は、商いが閑散だったもので、番頭さんは何かご用ですか?
」
「 そうや、これ、瓦町の大棚に持っていっておくれ。
」
「 はい、分かりました。 すぐに。 」
そう言って、金吾は封筒を受け取ると、小走りで会社をあとにした。瓦町の薬屋の大棚には2度目の使いだった。