短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ①



 

清水金吾、16歳。



彼は、北浜の証券会社に勤務している。少年が証券会社で働くことは、今では有り得ない話であろうが、昭和30年代くらいまでは、掃除やこま使いなどで、少年を雇っていることは多く、そんな中から場立(ばだち)と呼ばれる、取引所での仲買人役をやる人間も生まれた。



当時の証券会社では、人手不足が顕著であり、まさに猫の手も借りたい状態であったといえる。



もともと金吾の家庭は、裕福であったが、父親が事業に失敗し、長男である金吾でさえ、叔父の口利きで、北浜にある中ノ島証券で働かざるを得なくなったのである。



黒板を消したり、伝票の整理をしたり、と雑用係として日々を忙しく過しても、稼ぎのほとんどは親元に消えてなくなっていたのである。



そんなある日。



「おい、金吾、この株券、瓦町の薬屋の旦那まで届けてくれ!」と番頭(当時はまだ支店長は番頭と呼ばれていた)の山西から声がかかった。