ちーっと、いっぷく。


・・・・連続・私小説・三姉妹のFX・・・・・10-5


温泉街の夕方はすぐに暗くなって行った。 想いのほか、食事のできる店の数は多かった。 外湯から昔は賑わったであろう商店街みたいなところに入って行くと、美味しそうな中華屋があった。 温泉地で中華というと、酔って食べるラーメンが思い浮かぶのだが、少し洒落た外観であり、外に立てかけたあるメニューも美味しそうだったことから、「海、中華にしようか? 」と声をかけると、「 何でもいい。 ホテルじゃ美味しいもの高そうだしね。」と答えた。 店に入ると、中年の女性が「 いらっしゃいませ。 」と席に案内してくれた。


僕は、「 何かお勧めないですか? 」と言いながら、海と席に着いた。 海はテーブルの上のメニューを見ながら、迷っている様子だった。中年の女性は、「 今日はスーラータンメンがおすすめだけど、辛いわよ。 それとうちで一番出るのは餃子ですね。 」と答えた。 僕はスーラータンメンを頼み、海は汁ビーフンを頼んだ。


「 結構、美味しそうな店だね。 」


「 飛び込みで入った割には、当たりかな。 」


「 でもさ、お前と二人で泊まりの旅行って、小学生の時の地区のキャンプ以来だな。 」


「 そうだ。 思い出した。 あの時何で、同じテントになったのかな? 今でも疑問なんだ。 」


「 俺、憶えてんだけど、ほら女子でおねしょするかもしれない子がいるから、兄弟でテントに入ってってことになって、陸ちゃんがそのテントの年長さんで、小さな女の子集めたら、男子も同じ様に年長さんと小さい子になって、それで、俺たちが余ったってわけ。」


「 そうだっけ? 」


「 それに、家も近いからって、勝手に決められて。 俺、恥ずかしかったから、顔をテントから出して、朝を迎えたんだけど、顔をやたらと蚊に刺された記憶があるな。」


「 思い出した。 蚊に刺されても痒くなくて、そのまま寝込んで、ひどい顔だったよ。 ははは。 」


おしゃべりをしている間に、注文したスーラータンメンと汁ビーフンが出てきた。 各々味わってみると都会にはない優しい味だった。 辛いと言われたスーラータンメンだったが、日頃から辛いものを好んでいる僕にとっては、さほど辛くは無かった。 いつもの様に海の「ちょっと頂戴。 」が始まり、二人でドンブリを取り替えながら食事を済ませた。


程よく満たされたお腹をさすりながら会計を済ませて、店をでるとすっかり暗くなっていた。 ホテルの方向を確認しながら、歩いていると海が僕の左手を握って、「なんかデザート食べよ。 どっかいいお店なっかな? 」と囁いた。 僕たちはゆっくり歩いて店を探し回った。


・・・続く。。。・・・