短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑲
世間には、清水金吾の名前が晒されることはなかったが、中ノ島証券はえらい黒幕を抱えているという噂は流れていた。
中ノ島が動くとそれに同調する世間があった。中ノ島が大量の注文を出すと、他の人間も相場についていくこととなった。
金吾の取引手法は、単純であった。 評価が中の下くらいの株を選び、少しずつ買っていく、そこに大量の注文を出して仕上げにかかる。世間が飛びつく時には、もう逃げた時なのである。中ノ島にはその情報が欲しくて、顧客が多く集まった。
金吾は売買を頻繁にすることはなかった。相場で設けた金で学校に通った。それは、お金で世間を操る行為とは逆のものにも思えたが、金吾はまだ若かった。 もっと学ぶ必要を彼自身が抱えていたとも言える。
金吾が、学校に通うのは、夜であった。 小百合とは、学校に行く前に会っていた。中ノ島に預けている資金を持ってきてくれるのは、小百合の役目であった。 昔、金吾が小百合の実家に茶封筒を届けていたようにである。
ただ、小百合の実家は世間的には潤っているように見えたが、台所事情が次第に苦しくなっているのを金吾は知っていた。