短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑭
金吾が店を出ようとすると、小百合が声をかけた。
「 金吾さん、これから北浜の方まで行きますんで、連れってて頂けますか?」
「 私がですか? 」
「 中ノ島産ところの裏の呉服屋さんまでですけど。一緒に行きましょ。 いいでしょ、お父さん。 」
「 ああ、清水君、申し訳ないが、反物があるんで、持って行ってくれんか?」
「 わかりました。で、お嬢さん、反物はどちらに。」
「 これ、この風呂敷。 」
「 確かに重たいですね。 では、行きましょう。」
金吾は、薬屋の大棚の娘の荷物を持ち、小百合と並んで歩いた。小百合が言うには、16歳になったばかりだが、学校に行っていることもあり、北浜の界隈にはあまり行ったことのないとの事だった。呉服屋への用事は、母親の着物の反物を持って行くことだが、重たかったので、店先で手伝ってくれる人を探していたとの事だった。
金吾と並んで歩く小百合からは良い匂いがするのを感じ、そこだけ心がゆれた気がした。