短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑪

翌々日、「 坊、これ小遣いや。 」と社長がわざわざ封筒を持って来た。給金も入ってるから、帰ってから開ける様にと、念を押された。


夕方、家に戻り母親の前で封筒を開けた。中には給金の明細と社長が書いた手紙が入ってあった。


社長の手紙は簡単だった。 内容は、お前が走ったおかげで、会社は大きな利益を出し、その一部を分け与えると言うものだった。驚いたのは、母親である。普通の大人が受け取る程の給金が支給されていたのである。 母親は何度も金吾の頭を撫でて、感謝の言葉をくれた。そして自分が働くことによって、これ程喜んでもらえることが何よりも誇らしかった。


「 僕、ちゃんと頑張ります。 中ノ島の社長さんにも、そう言っときます。」


それが、母親への気持ちだった。


金吾が、相場の仕組みを理解するまでは時間を要したが、単純な話、注文を出し忘れたか、値段が欲しかったのかは分からないが、それが引き金で相場が上がったのである。情報を手にしたヤスさんは金吾を使い、社長の了承のもと、先に注文を出し、利益を得たのである。金吾にとっては、たった半日の事であるが、相場の世界では3年に一度あるかないかの出来事であった。