短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑨



「 金吾、はよしいいや。 」


「 ヤスさん、何でそんなに急ぐんですか?」


「 相場は、時間が命や。急いでんのと違うで、先に行けばええ事もある。肝に銘じとけ。 」


「 はい、ヤスさん、でもまだ時間あります。」


「 それが命取りや。相場の世界、失った金は相場で取り返せるけど、失った時間だけは、戻されへん。」


「 解りました。 」


「 おまえ、先に詰め所に行って、商いの確認をしとけよ。」


「 はい。 」


「 ほんで、手控えより数が増えとったり、減ってたりしたら教えてや。」


「 はい、ちゃんと見ておきます。 」


「 よっしゃ、わしは、卸の先と話ししとくでな。」


当時の商品相場の取引は取引所で、行われており、売買の量や注文の成立は人の手に拠るものであり、ヤスさんは、小豆相場の場立ちとして、取引所では一目置かれていた。金吾は株の世界から、小豆相場の世界に飛びこまさせられたのある。