短編小説 「 金吾の相場奮闘記 」 ⑥
金吾は、雑用をやりながら番頭さんの言葉を頭の中で繰り返し、一生懸命に覚えた。『それにしても、番頭さん以外の他の人も、お客さんもこんなことが全て頭に入っているんやろか?』、と疑問を抱きつつも、しっかりと憶えるしかなかった。
翌日、金吾はいつもより早く出社した。
金吾の顔を見て番頭さんは、「 おう、早いやないか?」と言いながら、紙を綴った冊子を渡してくれた。
「 お前のために、探してやったぞ。 これな昨日、お前に教えたことも、これから教えんといかん事もぜーんぶ書いとる冊子での、これを頭に入れることが先や。」
「 はい。番頭さん、でも解らんことばかり見たいなんで、解らんことは、聞いたらいいですか?」
「 解らん人間に解るように書いとるのが、この冊子なんでな。いっぺん隅から隅まで読んでからにしいや。 」
「 じゃあ、そうします。 ありがとうございます。」
「よっしゃ、そんじゃ。 全部の机の上、綺麗にふいといてや。今日の授業はおわりやで。」