短編 金と銀の器 ⑦
婚礼の祝い金とは、有難い話であるが、その金額が薬問屋の向かいにある小さな商店を丸ごと買えるくらいの金額であることには、驚いた。嘉吉としても、父からは、「弥生を尋ねて行って、困ったことがあれば、九州の勇吉の息子だと言えば、誰かが助けてくれる」とだけは、聞いていた。困惑したのは、むしろ嘉吉の方だった。
弥生の父いわく、勇吉は面倒見が良くて、困っている人がいたら、騙されていると分かっていても手助けをしており、本当は2年の奉公であったが、纏まったお金を作るのに5年を要したとの事だった。それがもう20年以上経った今でも、感謝されているのだと話した。
祝いをしたいと申し出たとある商人は、その昔、僅かなお金で商いが出来なくなりそうな折に、勇吉は金銭を工面してくれただけでなく、一緒に頭を下げに行ってくれたといって、その時から商いは、100倍になったと言って、借りた金額の100倍を持ってきたとの事だった。