短編 金と銀の器 ⑥
弥生と嘉吉の婚礼には、予想以上の参列者が姿を見せた。しかも遠方からも出席させて欲しいとの問合せがある始末である。 田舎から出てきた青年と薬問屋の末娘との婚礼にご近所は沸き立った。 弥生の父は、お祝いの多くを勇吉へとして預かっている様であり、嘉吉と夫婦になることは、弥生にとっては必然のものになってしまった。
婚礼は、決して派手ではなく、静かに執り行なわれ、参列者の大半が始めて顔をあわせる人間という以外は、普通の挙式であった。
婚礼後、3日後には、九州に送り出す娘のことを思って弥生の父は支度金を用意し、嘉吉と弥生を呼び出した。
「嘉吉くん、娘をよろしく頼むよ。 この通りだ。」と頭を改めて下げ、続けた。
「娘への支度金として、用意したお金があるが、これとは別に、勇吉さんにこのお金を渡して欲しい。これは、我々の家族からではない。 婚礼に来た人たちと、君の父親に世話になったという人たちから集まった金だ。」
突然、目の前に差し出された金額を見て、嘉吉は驚いた。すると弥生が、口火を切った。
「お父様、これだけの大金、旅には不自由です。それに嘉吉さんも困ってます。」
「そうだな、弱ったな。」と父は沈黙した。