短編 週末の恋人たち (1)
美佐は、この歳になるまで恋人がいなかった。 今年でいわゆる大台に乗ってしまう。 ただ恋人を作ることを断念したわけではない。 仕事、趣味、どんな社会生活の中でも地味に過ごしてきた。
それが、美佐の婚期までも遅らせたのであろう。
そんな美佐に興味を持ったのは、取引先の社員である片岡である。片岡は、美佐のめがねの下の眼差しに引かれるものを感じたからである。
片岡自身も、社会人になってからは、恋人というものを持ったことなかった。 仕事を一生懸命し、社内での人望は厚かったが、その生真面目さが人間的な魅力が露出する機会を奪ったのかも知れない。
はじめの言葉は、片岡が美佐の事務机の上に置いてあった一冊の本の話題から始まった。本のタイトルは、「くじらの彼」である。
続く・・・