ちーっと、いっぷく。
・・・・連続・私小説・三姉妹のFX・・・・・⑤-11
高速のサービスエリアを後にして、僕の車は更に南へと走った。 目的地は海の見える町であり、有名な地産品はラーメンとうどんだとのことである。 もちろん日帰りのドライブであるが、ラーメンとうどん、両方を食べて帰るのはスケジュールに盛り込まれている。
助手席の海の表情は、とても明るくなった。 海は僕の車のダッシュボードからカセットテープを取り出して物色している。 僕の車には、今はほとんどみることの無くなったカセットデッキが搭載されているのだ。 カセットテープは、中古車で買った時に前のオーナーの私物だけど、捨てるのはもったいないからと譲ってもらったものだ。 普段は、ほとんどラジオしか聞かないようにしている。 車自体がオンボロであるのと同時に、屋根が幌であるため、音を聞くには適していないからである。 海が見つけたカセットテープは、ドライブ用に前のオーナーが作ったサザンのものだった。タイトルは「ALL OF サザン (ドライブ用) 」である。 海がテープを入れると、アナログな音が流れてきた。
「 ねぇ、何でサザンなんだろうね? 」
「 んー、分からんけど、当時はサザンが良かったんじゃない。 」
「 そう。 この車の前のオーナーさん、見たことある? 」
「 顔は知らないけど、名前と住所は見たことあるかな? 自賠責保険に名前があったよ。確か、女性。 」
「 そうなんだー。 女の人の車じゃない感じだよね。」
「 んー、でも扱い方は丁寧な方だし、社内もきれいだったし、アウトドア好きの人だと思うよ。」
「 そうか。 この曲、知ってる? 」
「 ああ、愛しのエリー。 」
「 何で、しってんの? 」
「 何でって、なんでだろ。 まあ、テレビでもやってるし、そんな感じだろ。 会社の上司もカラオケで歌ってたし。」
「 いい曲だね。 」
「 知らないものって、いいものいっぱいあるよ。 そんなもんだろ。 FXって知らなかったけど、こうやって少しだけど、儲かってるし、そんなもんじゃねーの。」
「 うん。 そうだね。 前より近しくなったしね。 あたしたち。 」
そう言いながら、海は僕をじっと見つめていたが、運転中の僕はかるく海の表情を見るだけだった。 少し赤くなった海の顔を見た瞬間、海はひじを窓枠にあてて頬杖をつきながら、遠くを眺めていた。
まっすぐに続く高速道路の遥か彼方の景色を眺めながら、海はギアシフトに置かれた僕の左手をギュっと握ってきた。 海の手は暖かく、ギアチェンジの必要の無い僕の左手で、海の手をしっかりと握った。
--- 三姉妹物語 第一部 完 ---
まだまだ続きますよ。 by 僕