ちーっと、いっぷく。
・・・・連続・私小説・三姉妹のFX・・・・・②-7

車を車庫に戻し、僕の部屋に海と戻ってみると、まだ健一郎は帰っていなかった。
「 健一郎はまだ見たいだけど。 電話してみようか? 」と、玄関の鍵を開けながらの僕の問いかけに、海は、「 じゃあ、少しだけ待ってみる。 」と言いながら、俯いている。 不思議に思いながらも玄関に入り、スリッパを履いた瞬間、スリッパが動かない・・・?
「 おお、アブねーっ。 なんだスリッパが、どうなってんの? 」と叫んだ僕の後ろで、海がお腹に手を当てながら、俯いて肩を揺すっている。
「 あははは、ごめんなさい。 でも、・・・・あははは、ごめん。 お願い、もう少し待て。あははは。 」
キチンと玄関先に並べてあるスリッパは、整然と並べたれている。 よくよく目を凝らして見てみると、スリッパのつま先と踵の部分が釘で打たれている。
「 もしかして、お前? こんな酷いことしたの? 」と真っ赤になって、海にたずねると、「 ううん、ちがうような。クックック・・・。ははは。 」としか言葉を出さない。
整列されたスリッパは、右の端に置かれたちょっと小ぶりの来客用なんかに使うきれいなヤツ以外は、同じように釘で打ち付けられ、もし、履こうものなら十中八九の人は、つまずく様な細工がしてある。 周りを観察すると玄関の横に金槌が隠してあるのが分かる。僕の頭の中に、ドライブに出かけるまえに、やたらと車に乗り込むのが遅かった海の行動が頭をよぎった。
「 犯人さん、この罪はおもいなぁ。 」と僕が怒り口調に声を出すと、脇に小さくなった海が、「 ごめんなさい。 」と呟いた。
「 お前、これイタズラでも、度が過ぎてないか? スリッパを釘で打ちつけるって・・・、しかもここ賃貸だけど。 大家に見つかったら、怒られんぜ。 これは、犯人さんに弁償してもらわなくっちゃ、割りに会わん気がするけど。 」と海の顔を覗き込むと、「 そんなに怒らなくてもいいでしょ。 おもしろかったでしょ。 でも犯人は私じゃありません。 」と反論してくる。
「 じゃあ、誰? 」
「 ええーっと、たぶん犯人は、この部屋に出入りしていて、金槌が上手く使えて、かわいらしいイタズラを思いつく女の子だと思う。 」
「 ・・・って、おまえじゃん。 この部屋に入るのは、海と健一郎の女だけだぜ。 じゃあ、必然的にお・ま・え。 」と指でおでこをつくと、「 なんで、健ちゃんの彼女じゃないの? なんで私? 」とそ知らぬ素振りで、頬を少し膨らませて聞いてくる。
「 だってなあ、あの彼女、たぶん料理もあまりできないし、どうみても図工や技術家庭の成績がトップクラスだった誰かさんとは大きく違う気がするけどねぇ。 」と言うと、「 犯人も分かったし、そういうことで、ごめんなさい。 」と、続く言葉を切り捨てた。
僕が少し怒っていたのもありちょっと気まずいまま、海は部屋に上がりこんだが、俯いた顔は笑いをこらえている感じだった。
「 ちょっと、お手洗いかりまーす。 」と言いながら僕の前から消えたが、遠くから笑い声が聞こえてた。

・・・続く。。。・・・